峰岸徹のダンディズム
絶対に薦められない大林映画第2弾は、「麗猫伝説」(監督:大林宣彦、1983年)である。
この「麗猫伝説」は、日本テレビの「火曜サスペンス劇場」で放映された。
いま見ると、とてもテレビ向きとは思えない、幻想的なアングラムービーである。個人映画、といってもよい。だが私の大好きな作品である。
簡単に内容を説明すると、
かつては「日本のハリウッド」と呼ばれながらも、いまは映画不況に苦しむ「瀬戸内キネマ」が、30年前に製作中断された「化け猫映画」を復活させるべく、撮影途中に突如引退した伝説の大女優(入江たか子)の復帰を画策する。伝説の大女優は、引退した30年前とまったく変わらない若さのまま、瀬戸内海の離れ小島で、元監督(大泉滉)と世捨て人のような生活を送っていた。
ストーリーは、「伝説の大女優」(入江たか子、入江若葉の親子が演じた)、大女優のもとに送りこまれた若き脚本家(柄本明)、そしてその恋人(風吹ジュン)といった人々を中心に展開される。
「伝説の大女優」を演じた入江たか子は、かつて実際に大映の「化け猫映画」シリーズに主演した往年の名女優で、映画は虚実皮膜の間をさまよいながら進んでゆく。
だが、この映画で何より印象的なのは、「伝説の大女優の私生活」をスクープするために取材をする芸能ルポライターを演じた、峰岸徹である。
峰岸徹こそは、大林宣彦監督のイメージする「ダンディズム」を体現する役者である。そして「麗猫伝説」こそが、数ある出演作の中で、峰岸徹のダンディズムが最もよくあらわれている作品なのである。
「ダンディ」とか「ダンディズム」とかは、すでに死語かもしれないが、それ以外に表現しようがない。
「頼まれたことはあとには引きませんよ。なにしろこれが私の人生の文体なんでね」
そう言って去って行く後ろ姿は、映画史上に残る名場面である。
「なにしろこれが私の人生の文体なんでね」
この言葉を私は、ときおり思い出す。
自分にとっての「人生の文体」って、何だろう。
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