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大型連休の年中行事

5月5日(日)

午後2時。

出身高校のOBたちによる吹奏楽団の定期演奏会の開演に、何とか間に合った。

今年で22回目を迎える、ということは、創立して22年が過ぎた、ということである。私はその創立にかかわり、第9回の演奏会まで、毎年参加していた。それ以降、東京を離れてしまったので、演奏には参加せず、観客として演奏を聴く側にまわった。一昨年、司会者として舞台に立ったが昨年の演奏会では、司会をドタキャンしてしまったため、何となく演奏を聴きに行くのも、後ろめたい気がしていた。

だが2週間ほど前、高校時代の同期のフクザワから、

「絶対に聴きに来るように」

とメールが来た。フクザワは今年も演奏会に出るらしい。昨年のこともあるので、聴きに行くことにしたのである。

4時半、演奏会が終わり、客席から立ち上がると、「久しぶり」と声をかけてくる人がいた。

高校時代の同期のKさんである。高校時代、私に大西巨人の『神聖喜劇』を勧めた人である。

Kさんはここ数年、演奏会に出ていたのだが、今年は忙しくて、観客の側にまわったのだという。立ち話で、最近の話などをする。

都内の高校で国語の教員をしているKさんは、わからずやの上司にはっきりと意見を言ったために職場を追い出されそうになったこと、若い同僚たちの中にもジコチュウの人間が多くて困っていること、最近はますます余計な仕事が増えてきているが、授業だけは絶対に手を抜けないこと、職場には病気のため休んでしまっている同僚が増えたため、その分の仕事のしわ寄せが自分のところに来ていること、大変な職場だが、生徒たちに救われながら何とかやっていること、などを話した。

「どこも同じだねえ」と私。「うちのところもそうだよ。こんな状況でも、心を病むことなく勤めあげていることを、むしろ奇跡だと思わなきゃね」

「その通りだね」とKさん。Kさんは、相変わらずまじめで、筋を通す人だなあ、と、話を聞いていて思う。たぶん高校時代、私はこの人の「筋を通す生き方」に影響を受けたのだと思う。

kさんは、一緒に来た同級生のHさんとお茶をするというので、帰っていった。『神聖喜劇』を紹介してくれたことを覚えているか、確かめようと思ったが、とてもそんなことは聞けなかった。

その後、同期のフクザワに誘われて、演奏会の打ち上げに参加した。

演奏会のメンバーはすっかり代替わりして、そのほとんどはまったくわからないので、少しだけ顔を出して帰るつもりだったのだが、久しぶりにフクザワと会い、すっかり話し込んでしまった。

「来年こそ、演奏会に出てくれよ」

この言葉は、もはや年中行事のようになってしまった。だが、いまの仕事の状況では、どうなるかは、まったくわからない。

後輩たちも、「私たちのためにも演奏会に出てください」と言う。「どうして」と聞くと、「先輩が出てくれれば、私たちのモチベーションも上がるんです」と答えた。

どういう理屈でそうなるのか、はかりかねていたが、ともかくあの手この手で、私を演奏会に出そうとしているらしい。

のらりくらりかわしているうちに、気がつくと夜11時になってしまった。

かくして大型連休の年中行事が終わり、打ち上げ会場をあとにした。

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