師弟は似るのか、似ているから師弟なのか
4年生にもなれば、私がどんな性格なのかを、よく理解するようである。
だから4年生くらいになって、ようやく学生との会話も楽しめるようになる。
ここ最近、進路の関係でしばしば相談にやってくるSさんが言う。
「志望動機に○○、というのを書こうと思うんですけど」
「いいじゃないの」
「でも、公務員講座の先生に聞いたら、ちょっと首をかしげられてしまって…。本当に書いていいものかと…」
「そんなことないって」私は説明をはじめた。
「やっぱり書いてもいいですかね」
「むしろ書いた方がいいと思うよ」
「そうですか…。すみません先生。私、面倒くさい性格なんで、こんな些細なことをグジグジと考えてしまうんです」
もちろん私は、Sさんのそういう性格をよく知っている。
「大丈夫だよ。私だって面倒くさい性格だから、よくわかる」
その言葉に、Sさんは笑いだした。
「私なんか、面倒くさい性格、というより、厄介な性格だから、『やれやれ』と、親しい人も、さすがに嫌気がさしてくるみたいなんだ。この年齢になってもこんな性格だから、困ったもんだ」
その言葉に、Sさんはさらに腹を抱えて笑い続けた。
ひととおり笑ったあと、Sさんが言う。
「少し気が楽になりました」
もっと面倒くさい人間がここにいた、ということに、安心したんだろう。
「そういえば先生、疑り深い性格ですよね」
「うん。よくわかっているね」
「そんな場面を何度も見ましたから。私も疑り深い性格なんです」
これは自慢でも何でもないんですよ、と前置きしながらSさんが続けた。
「高校時代にテストで100点をもらったことがあったんですが、絶対にそんなはずはない、と思えて、先生に『この答案が100点なのはどう考えてもおかしい』と、食ってかかったことがありました。そうしたら、先生が、『100点の答案を疑うヤツはめずらしい』と呆れられたんです」
いかにもSさんらしい逸話である。
「試験の答案を見ているとね、『これは100点しかつけようがない』という答案に出くわすことが、たまにあるものなんだよ。あなたの答案は、まさにそうだったんだろう」
「そういうものですか…」Sさんは少し納得したようだった。
それにしても、私の指導学生たちは、程度の差こそあれ、こういうタイプの学生がほとんどである。
師に似るのか?
それとも、似ているから師に選ぶのか?
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