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k田君とFさん

前回の話の続き。

20年近く前のことである。

ある研修先で、同じ研究分野のFさんと知り合った。Fさんは、私よりも少し年上である。

週に1度の研修を3カ月ほどしたあと、Fさんはある地方自治体に就職することになった。

しばらくして、Fさんに会ったときに、Fさんが言った。

「K田君って知ってる?」

「知ってますよ。高校時代の友人です」

と、そこまで答えて思い出した。

K田君は、数年間つとめていた大手民間企業を辞めて、公務員試験を受けて、その年の4月からFさんと同じ地方自治体に勤めることになったのだ。K田君自身から、その話は聞いていた。

「この前、新人研修で一緒だったんだけどさあ。意気投合しちゃってね。そしたら、あなたの話題が出たんだ」

Fさんが私と同じ専門分野である、というところから、K田君はFさんに私の名前を出してみたのだろう。

周りはみんな、大学を卒業したばかりの若者たちである。そんななかで、FさんもK田君も少し浮いた存在だったのかもしれない。同期入社の、同世代の浮いた者どうし。意気投合するのは当然のことであった。

「K田君、おもしろいやつだよなあ」

「そうでしょう」

研修のあと、二人は全然違う部署に配属された。それからほどなくして、私はK田君の住む町に、遊びに行った。私の記憶では、遊びに行ったK田君のアパートで、その時はじめて「Windows95」というパソコンに触れたから、たぶん1995年のことだったと思う。

話題といえば、Fさんのことである。

「Fさんには新人研修の時、本当にお世話になってねえ。おもしろい人だよねえ」

「そうだよねえ」

K田君の性格もFさんの性格もよく知っている私は、ウマが合うのは当然だろう、と思った。

それからしばらくして、Fさんは職場を移った。

さて、いまから数年前のことである。

私はひょんなことから、Fさんと共著で本を出すことになった。出版社側がキャスティングしたのである。

しばらくぶりにFさんと会い、一緒に仕事をした。苦しくも、楽しい仕事であった。

同業者が数多くいる中で、Fさんと私の二人の共著を出す、というのは、たまたまとはいえ、因縁めいていた。K田君が結びつけた縁なのだろうか、とも思った。

そんなことを思い出しながら、今になって、やっと気づいた。

あの本は、真っ先にあいつに送るべきだったのだ!

なぜそのことに思い至らなかったのだろう?

3年も遅れてしまったが、あいつにあの本を送ろう。

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