田所博士は実在するか
なんと、このブログで禁じ手の時事ネタですよ!
東日本大震災による原発事故以後、小出裕章さんが、『日本沈没』(小松左京原作)の田所博士と、重なって見えて仕方がない。
小松左京というSF作家が、『日本沈没』という小説を書いたのは、1973年のことである。日本列島が沈没するという荒唐無稽な設定の中で、日本に住む人びとが、世界各地に避難する様子が描かれている。空想科学小説だが、東日本大震災や原発事故を経験した私たちにとっては、決して荒唐無稽ばかりとはいえない、重要な意味を持つ小説となった。
この小説は、同じ1973年に森谷司郎監督によって映画化され、さらに翌年、TBSでも連続ドラマが制作された。
この中で、重要な役割を果たす人物が、孤高の科学者・田所博士である。映画とドラマの双方で、この役を小林桂樹が演じた。
田所博士は、日本沈没を予測した科学者だが、異端の学者で、権威にはことごとく抵抗していた。まわりからは、偏屈な学者として煙たがられていた。
だが、彼の予測は的中する。日本列島が地殻変動を起こし、沈みはじめたのである。ときの総理大臣(丹波哲郎)は、田所博士を、三顧の礼をもって政府の危機対策チームに迎え入れるのである。
小出さんも、原子力工学の分野では異端の学者で、権威にはことごとく抵抗している。多くの科学者から、非科学的だと批判もされている。大の政治嫌いとしても有名である。そんなこともあって、必ずしも恵まれた地位にいるというわけではない。
まさに、現代の「田所博士」なのである。
かつて「豪腕」と呼ばれた政治家がいた。一時期は総理候補、ともいわれたが、いろいろあって、今は小さな野党の党首である。
その豪腕政治家が、小出さんの勤める研究所を訪れる。大阪の南の方にある町に、その研究所はある。
そこでその豪腕政治家は、小出さんに深々と頭を下げ、原子力についての小出さんの話に、熱心に耳を傾ける。
反骨の科学者は、淡々と、自分の考えを臆せず話す。
その対談の様子が、動画サイトで公開されていた。
反骨の科学者の話に、姿勢を正して謙虚に耳を傾ける、かつての豪腕政治家。
まるで映画のような場面である。
この対談に、『日本沈没』の田所博士を重ね合わせるのは、幼稚にすぎるだろうか?
それとも、映画と同じように、希望を見出すべきだろうか。
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