村が見晴らせる場所
6月9日(日)
この村を訪れるのは、4度目である。
正直なところ、今日は休みたかった。とくにこの週末は、やるべきことが多すぎた。
「休んだらいいじゃん…ま、どうせ聞きゃあしないんでしょうけど」
妻のアドバイスを聞き流すことの多い私に、妻はすっかり呆れていた。
極度の疲労なので休みたいのはやまやまなのだが、私が言い出しっぺの1人なので、やめるわけにいかない。それに、学生に呼びかけたら、ありがたいことに5人も来てくれたのだ。
それに、何より今日のこの活動を企画してくれたT君が、
「本当はこんなことをしている場合じゃないんです」
という。本業が、あまりに忙しすぎるというのだ。
みんな、ギリギリのところで頑張っているんだなあ。
午前11時。O村に向けて出発する。
O村では、地元の先生の全面的なご協力のもと、地区の家をまわり、その家の方のお話をうかがい、それを記録する。
午後4時すぎ、本日の予定が終わった。
「村が見晴らせる場所に行きましょう」
地元の先生の提案で、村が見晴らせる場所に行く。
文字通り、村が見晴らせる場所だった。
しばらく、ボーッと見ていると、卒業生のT君が言う。
「先生、癒されましたね?」
「癒されたねえ」
公民館に戻り、今日の調査のまとめを話し合った。
参加してくれた5人の学生は、いずれもはじめての参加だった。
5人がそれぞれ、今日の調査で感じたことを自分の言葉で話してくれた。ふだんの授業では決して味わうことのできない体験を、したことだと思う。
やはり来てよかったのだ。
…と、ここまで書いて思う。
大学では決して味わうことのできない体験を、大学の教員である私が推奨するのは、いかがなものか?まるで自分の職業を否定しているようなものではないか?
そう考えると、オレはいったい何者なのか?と、なんか可笑しかった。
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