バイパス・ウォーキング
6月6日(木)
職場の廊下を歩いていたら、めったに話さない同僚とすれ違った。
…というか、私はふだん、ほとんどの同僚とめったに話さないのであるが。
「あのう…」すれ違いざまにその同僚が言った。
「何です?」
「3週間ほど前でしたか。日曜の午後に、国道のバイパス沿いをお一人で歩いていませんでしたか?」
…思い出した。その日は自家用車の定期点検で、バイパス沿いにある自動車ディーラーの店に行っていたのである。
そしたら、点検に2時間近くかかるという。
(2時間も待つのは、しんどいなあ)
そのとき、その店からバイパスを15分ほど歩いたところに、薬局が経営する温泉があることを思い出した。
そうだ、温泉に行こう!と思い、
「じゃあ、ちょっと出ますので。2時間後には戻ってきます」
と、その店を出て、その温泉に向かって、バイパスの歩道を、とぼとぼと歩いていったのである。まだ日ざしの強い、午後3時ごろのことだったと思う。
たぶん、そのときの様子のことを言ってるのだろう。
私は同僚に、そのことを説明した。
「そうだったんですか。…それを聞いて安心しました」
「しかし、何で私がバイパスの歩道を歩いていたことを知ってるんです?」
「たまたま家族と車でバイパスを走っていたら、歩いているところを見かけたんです」
「そうだったんですか」
「声をかけようとも思ったんですが、何か思いつめたようにお一人で歩いていて、しかも、あのバイパス、歩道を歩いている人なんてほとんどいないじゃないですか」
「たしかにそうです」そのバイパスは、県内の「動脈」ともいえる幹線道路だった。しかも、ディーラーの店の周辺は、車がビュンビュンと行き交うだけで、ほかには何もないのだ。
「だから何かご事情がおありかと思って、聞けなかったんです。でもいま聞いて、安心しました」
いったいどんな想像をしてたんだ?
「しかし、まさかそんなところを見られていたとはねえ…。うっかりオモテを歩けませんねえ」
完全に、野面(のづら)で無防備な感じで歩いているところを、見られてしまったのである。
しかも、「何か思いつめたように歩いていた」ように見えたというのだから、バイパスの車道に飛び込もうとしていた、とでも思っていたのだろうか。
いったい私は、ふだんどんな顔をして歩いているのか?
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