おしゃれっぷりにあたる
6月22日(土)
東京の家にて。
今日の夜は妻が、知り合いの関西のお金持ちの紳士の招待で、何人かで会食をするという。
人形町の超有名な「すき焼き」屋さんでごちそうになるのだという。ビックリするくらい高価なすき焼きだそうである。
だが、妻はここ最近、胃の調子が悪い。先週末、出張先で酸辣湯面(スーラータンメン)を食べ生ビールを飲んでからというもの、すっかり胃がやられてしまったのだという。
これではすき焼きに差し支える、ということで、朝から絶食宣言をした。
すき焼きに呼ばれているわけではない私も、なぜか絶食につきあわされることになった。
今日は家で休みながら、たまった仕事でも片付けようと思ったが、妻が、ある美術館のチケットの招待券をもらったので、見に行こうという。
家でウジウジと考えごとをしていても仕方がないので、せっかくなので見に行くことにした。
しかし、ここで問題がある。
私はこの週末、仕事を片付けようと、ビックリするくらいの本や仕事道具を持ってきていた。大きなリュックサックと、キャスター付きのスーツケースに、ぎっちりと詰めて込んできたのである。
しかも、今日の夜は、明日の研究会会場の近くのホテルに泊まらなければならない。そして終わるとはそのまま、勤務地に戻るのである。
だから、荷物を全部持って移動しなければならないのだ。
電車を乗り継ぐこと1時間。都内でも有数の高級住宅地の中に、その美術館はある。
大きなリュックを背負い、キャスター付きのスーツケースをがらがら引きながら高級住宅地を歩いてみたが、いいねえ、高級住宅地は。
なんといっても、緑が多い。
広い庭には大きな木があって、その木のおかげで、道路に木陰ができる。
そしてその道路はそんなに車が通らないものだから、風が吹き抜けるのである。
だから、道路を歩いていても、涼しいのである。
なんたって、余裕があるものなあ。
うちみたいな、狭い土地に隙あらば家を建ててやろう、みたいな住宅地とは、雲泥の差である。
なるほど、「金持ち喧嘩せず」とは、こういう環境だからこそはぐくまれるんだな。
訪れた美術館自体が、ある財閥の会長が集めた美術品を公開しているところだもの。しかもそこにはビックリするくらい広い庭園が付設されているのだ。段丘を利用した広い庭園は、武蔵野の雑木林におおわれた静かで贅沢な空間である。思索に耽るにはもってこいの場所だ!
「こんなところに住んでみたいなあ」
「売れる本を書けたらね」
相変わらずきついことを言う。
見終わってから、渋谷に移動した。妻が、すき焼きをごちそうしてくれる紳士に、おみやげを買わなくてはならないためである。
そこではじめて、「ヒカリエ」というところに行った。
行ってみたら、まあ、ビックリするくらいおしゃれなところである。
なんと言っても、歩いている人たちが、みんなおしゃれなのだ。
男性はみんなスマートだし、女性はみな美しいときたもんだ。東京って、こんなにきれいな人が多いのか?
どこかでパーティーをやっているのか?というくらい、みんなドレスみたいなものを着ているぞ!
そしたら、本当にワインの試飲パーティーみたいなことをやっていた。
(これは、いよいよ場違いだぞ)
何しろこっちは、大汗をかきながら、大きなリュックサックを背負って、キャスター付きのスーツケースを転がしながら歩き回っているのである。
歩いていると、「クリエイティブラウンジ」なるスペースを発見。
「なんだい?このクリエイティブラウンジって」
「オフィスを持たない若いベンチャービジネスの人とか、クリエイターとかが、ここを事務所代わりにして、自由に仕事をするスペースなんでしょう」と妻。
なるほどねえ。さすがおしゃれな発想だ。
とにかくこんな光景ばかり見せられてしまったから、すっかり私はこのおしゃれっぷりにあたってしまった。
ここでいう「あたる」とは、「食あたり」とかの「あたる」ね。
夕方、妻は人形町に向かい、私は研究会会場の近くのホテルに向かった。
夜、妻から「すき焼き」の報告が。
「1枚60グラムの上等な牛肉を3枚食べたら、お腹いっぱいになった」と。「お金持ちの紳士のお話を聞いたが、あまりに住む世界が違うんでビックリした」とも。
うーむ。こりゃあ、絶対に専攻を間違えたぞ!
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