« むかしテンプラ、いまテンプレ | トップページ | 自分にとっての三角形 »

知ってることしか言うてへん

8月2日(金)

今日は恒例の「補講」である。

ほぼ丸1日、補講をした後、3年生のSさんが前期の「打ち上げ」を企画してくれた。繁華街にある、オシャレな洋風居酒屋である。ここ最近は学生たちとそんな機会がなかっただけに、ありがたいことである。

今期は、私の父よりも年上の男性が1人、私の授業を聴講しておられる。かりに「老紳士のSさん」と名づけよう。

その方もお誘いしたところ、参加してくれることになった。

二十歳そこそこの学生たちからすれば、「おじいちゃんと孫」といった関係である。その両者が、同じ授業を受け、「打ち上げ」に参加する、というのは、めったにあることではない。

私自身、学生とどんな話をしてよいものか、いつも困っているのだが、3年生のSさんが場を盛り上げてくれるおかげで、何とか話題についていけた。

「今日、テレビで『ラピュタ』をやるんですよ」と3年生のSさん。

私は2年以上テレビを見ていないが、ジブリの最新作「風立ちぬ」のプロモーションのために放映されるのだろう、ということは、容易に想像できた。

「『風立ちぬ』が公開されているからでしょう?」と私。

「そうです」

「あの映画の主題歌、知ってる?」

「ユーミンの歌ですよね」

「そう、『ひこうき雲』。ユーミンはあの歌で、世間に認められたんだ。とても哀しい歌だけどね」

見てもいない映画なのだが、それくらいのことは知っていた。

「あと、ジブリ作品では、もう一つ、ユーミンが主題歌を歌っている映画があるよね」調子に乗った私がしゃべり出す。

「何ですか?」

「『魔女の宅急便』の『やさしさに包まれたなら』だよ」

「あ、そうですね」

こうなるともう、止まらない。

「『風の谷のナウシカ』、あの劇伴音楽は、最初は細野晴臣が担当する予定だったんだ。それで、細野晴臣が作曲した『風の谷のナウシカ』という曲を、安田成美の歌で出してプロモーションまでしたんだけれど、その後久石譲がナウシカのイメージアルバムを出したら、宮崎監督がそれをひどく気に入って、ナウシカの劇伴音楽は久石譲が担当することになったんだ」

「『耳をすませば』の舞台は、私の実家のすぐ近くだ」

「宮崎監督は、プロの声優をあまり使いたがらない。トトロの糸井さんとか、ポニョの所さんとか、ハウルの倍賞さんとか…。今回も、庵野さんでしょう。…ということはだよ、この私でも、ジブリ作品で声優になるチャンスはあるというわけだ」

「先生、すごいです。ジブリ作品マニアじゃないですか!」ここまで聞いていたSさんが驚いたように言った。「今年の学園祭のカルトクイズのテーマが『ジブリ作品』なんです。先生も絶対にエントリーした方がいいですよ」

おいおい、ちょっと待て。私はジブリ作品には、じつはほとんど思い入れがないのだ。むしろ乗り遅れた、といってもいい。

その証拠に、これまでこのブログの中で、ジブリ作品についてふれたことは一度もない。

実のところ、私のジブリ作品知識は、以上で終わりなのである。

「先生、すばらしいです」

先ほどから、私と学生たちの会話をじっと聞いていた、老紳士のSさんが言った。

「先生は、見事に学生の話題についていっておられますね。日ごろから、ご専門だけでなく、学生の関心事についても、広くお勉強されておられるのでしょうか」

「いえ、そんなことはありません」

「私には、まったくお話についていけませんが、先生は、学生のお話に見事についていっておられるではありませんか。さすがです」

妙なところに感心されてしまったものだ。ひごろ、「学生の話題にはついていけない」と嘆いている私だが、私よりもさらに年上の人から見れば、「ついていけている」ように見えるのである。

だが実際は、「私が学生たちの話題についていっている」のではない。

「学生たちが、私の話に合わせてくれている」に過ぎないのだ!

そこのところを、見誤ってはいけない。

「でも先生、何でもよくご存知ですねえ」老紳士のSさんが続ける。

「そんなことはありません」私は強く否定した。

それで思い出した。むかし、「鶴瓶・上岡パペポTV」という番組で、笑福亭鶴瓶と上岡龍太郎がこんな会話をしていた。

鶴瓶「師匠、何でもようモノを知ってまんなあ」

上岡「知ってることしか言うてへん」

このやりとりに、腹を抱えて笑ったことがある。

…そう、たしかに私は、「知ってることしか言うてへん」のじゃ!

|

« むかしテンプラ、いまテンプレ | トップページ | 自分にとっての三角形 »

職場の出来事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« むかしテンプラ、いまテンプレ | トップページ | 自分にとっての三角形 »