隊列のフォークロア
8月7日(水)
3日続けて行われる地元の夏祭りの、最終日であることを思い出し、職場から歩いて見に行くことにした。
ここのお祭りは、少々変わっていて、独特のデザインを施した笠を持ちながら民謡に合わせて踊りを踊り、しかも踊りを踊りつつ、さながらパレードのごとく、直線の道路を少しずつ前に進んでいく、というものである。
踊りは個人単位で踊るのではなく、職場や学校やサークルといった、組織や団体が一つの単位となって、一丸となって踊るのである。団体ごとに、踊り方や衣装がちょっとずつ異なる、というのも、このお祭りの見所である。
踊りを踊る各団体は、隊列を組んで、音楽に合わせて一糸乱れぬ踊りを見せる。そう、「隊列」という言葉がふさわしいほど、この踊りは整然としているのだ。
旧繁華街の目抜き通りで、この「パレード」は行われる。もともとお祭り用に作られた道ではないので、片側一車線の狭い道路である。それに加えて、両脇の歩道も実に狭く、沿道はいつも見物客でごった返している。
午後6時半過ぎに行くと、すでに多くの見物客がいて、身動きがとれないほどだった。
本当は、通りの反対側にある、「ホテルのシェフが出している屋台」の牛肉の串焼きを食べるのが楽しみだったのだが、もちろん、踊りを踊っている中を横切って道路を渡ることなどできないので、あきらめた。
それにこの日は、知り合いが踊っている団体が一つもないのだ。一人で見ていても面白くも何ともない。
考えてみたら、うちの職場が踊りで参加したのは、一昨日の初日(月曜日)だった。
そういえば、初日(一昨日)の、うちの職場の踊りを見たという人から、こんなことを聞いた。
「うちの社長が踊っているかな、と思って隊列の先頭を見てもいなかったんです。そしたら、2列目にいらっしゃいました」
「ほう。いちばん前じゃなかったんですか}
「前の社長のときは、列の一列目の真ん中に社長がいて、その両脇に副社長がいて、次の列に管理職がいて、管理職の列の後ろが女性社員、そしていちばん後ろが男性の平社員、という順番だったんです」
なんとも、職場のヒエラルキーを具現化したような隊列である。今は、そんなことはないのだろうか?
そこでふと思いついた。
このお祭りに参加した各団体の「隊列」を分析することで、その組織の特徴が明らかになるのではないだろうか、と。
だれか調査して、レポートでも卒論でも、書いてくれないかなあ。
たとえば、社長や管理職が一番前を陣取るような組織は、
「ははーん。さては権威主義の職場だな」
とか、
華やかな女性たちが、華やかな衣装を着て、前方で隊列を組み、後ろに地味な男性たちが隊列を組む会社は、
「ははーん。この職場では、女性だという理由で、受付みたいな華やかな場所に配置させられたりしているんだろうな」
とか、
前方では、小学生たちが男女の別なく元気に踊りまわり、後方に、先生と覚しき大人たちが、これまた男女の別なく、同じ衣装で安定した踊りを見せている小学校は、
「先生たちが、小学生たちの踊りを引き立たせて、しかも男女がわけへだてなく踊っているぞ。いい小学校だなあ」
とか、自分とは無縁の団体でも、見ていると何となくその組織の性格がわかったような気になるのである。
踊りの隊列にこそ、その組織の本質があらわれているといっても過言ではない。
…だが、注意すべき点は、こんな見方をしていると、全然お祭りが楽しめない、ということである。
やはりお祭りは、何も考えずに見て楽しむのがよい。
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