韓国語は身を助ける
8月21日(水)
お昼休み、構内の食堂でお昼を食べようと、仕事部屋を出る。
もちろん、ショルダーポーチは忘れていない。
廊下を歩いていると、昨日に引き続き、4年生のSさんとすれ違う。昨日、私が財布を忘れてお金を借りたSさんである。
「あ、先生、今メールをお送りしようと思っていたところでした」
「どうしたの?」
「さっき、多目的室で勉強していたら、韓国の学生の方に話しかけられたんです」
「留学生?」
「いえ、何でも、東京の大学に留学していて、たまたまいま、こちらに来ている人たちだそうです」
「人たち?」
「ええ、何人かいるみたいです。で、先生の話をしたら、ぜひお話がしたい、っていうんです」
「何でまた?」
「先生は韓国に留学されたことがあって、韓国語が話せる、とお話ししたら、ぜひ先生に会いたいと」
数日後に韓国に出かける私にとっても、韓国語の練習になるかもしれない。
「今、その人たちどこにいるの?」
「今食事中で、午後になったら先生にお会いする時間を作りたいって言ってました」
「じゃあ時間が決まったら連絡してください」
「わかりました」
Sさんと別れて再び歩き出すと、今度は前からものすごい勢いで走ってくる人がいた。
この4月から勤務している新人職員のOさんである。
「あ、先生!これから午後の実習の準備です!」
そうか。Oさんにとっては、初めての実習補助体験である。
「頑張ってください」
と、ものすごい勢いで走り去るOさんに声をかけた。
建物を出ると、今度は7月に海外留学から帰ってきたSさんとすれ違う。
「先生こんにちは」
「こんにちは。どうですか、最近は」
「卒論のテーマがなかなか決まらなくって」
ということで、20分ほど、立ち話で卒論相談をする。
「ありがとうございました」
…これでようやく昼食にありつける。時計を見たら、仕事部屋を出てから30分が経過していた。
さて、午後。
4年生のSさんとNさんが仕事部屋にやって来た。
先ほどの韓国人の学生たちが、食堂の前にいるというので、Sさん、Nさんと一緒に食堂まで行くことにした。
食堂の前に、4~5人の若者たちがいた。
「アンニョンハセヨ(こんにちは)」
久しぶりに使う韓国語である。以下、韓国語での会話。
「先生でいらっしゃいますか?」
「はい」
「韓国の方ですか?」
「いえ、日本人です」
「あんまり発音がお上手なので、韓国の方かと思いました」
韓国人がよく使うお世辞である。だが実際私は、韓国語の発音がいいと、いろいろな人に褒められたことがある。発音だけは、自信があるのだ。
で、発音がいいと、韓国語が堪能だと思われてしまい、早口で喋りかけてくるのである。
引き続き、韓国語による会話。
「韓国語はどうやって勉強したんですか?」
「韓国に1年3カ月ほど、留学したことがあるんですよ。みなさんは、東京からいらしたんですか?」
「はい。いま東京の大学に通っています」
「ご出身は?」
「私はソウルです」
「私は中国のハルピンです」もう1人が答えた。
「ということは、朝鮮族ですか」
「そうです。ご存じですか?」
「ええ、知っています」
…とまあ、こんな会話が延々と続いた。
久しぶりに喋る韓国語は、口がまわらず、聞き取りもままならず、さんざんだったが、韓国語がわかる日本人がいた、というだけで、彼らも嬉しかったらしい。
「お目にかかれてよかったです」
彼らはこのあとパーティーがあるとかで、15分ほど話して、お別れした。
さて、この一部始終を見ていたのが、4年生のSさんとNさんである。
「せ、先生!」
「どうした?」
「先生が韓国語で話しているのを、はじめて見ました」
そういえば、うちの学生たちの前で、韓国語を使ったことは、一度もなかった。
「先生、カッコイイです!」
4年生の2人は、びっくりした様子だった。
「少しは見直したでしょう?」
「はい」
これで昨日の「財布を忘れた一件」は、帳消しになっただろうか。
「先生、どんなことを話してらしたんですか?」
「いろいろさ」
「私、『政教分離』という言葉だけ、聞き取れました。政教分離、政教分離、って、何度も言ってましたよね?」とNさん。
「セイキョウブンリ???」
政教分離なんて話題、まったくしていなかったぞ。
別の言葉がそのように聞こえたのだろうが、いくら思い返しても、「政教分離」に近い発音の言葉を使った記憶はなかった。
いったい何が、そう聞こえたのだろう?
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コメント
잘생긴 분이 (ハンサムな 方が)の最初の1文字(チャル)が聞き取れなかったのでは?
センギンブンニ
センギンブンリ
センギョンブンリ
セイキョウブンリ
ほらね。
投稿: ちょんだん! こぶぎ | 2013年8月21日 (水) 22時39分
なるほど、たしかにあのとき、분이(ブンニ、「~の方が」の意味)という言葉を多用していました。「ブンニ」が「ブンリ」に聞こえた可能性は、十分に考えられます。しかし、「ハンサムな方が」と言われた記憶はありません。
いま思い出したのですが、学生の一人に、「今どこの大学に通っているんですか?」と質問したときに、その学生と、こんなやりとりをしました。
「とんぎょんえそぬん むすんてはくえ たにご いっそよ?」
「せいぶぶんり てはくよ」
「せいぶぶんり てはく?」
「ねー。さいたまえ いんぬん」
「さいたまえ いんぬん せいぶぶんり てはくよ?」
「ねー。せいぶぶんりてはくよ」
ひょっとしたら「せいぶぶんり てはく」の「せいぶぶんり」が、「セイキョウブンリ」に聞こえたのかもしれません。
…というか、そうに違いない!
投稿: onigawaragonzou | 2013年8月21日 (水) 23時04分
えー、これじゃフツーの通りすがりの会話ですわん。お互い敬語のやりとりですし。イケメン自慢トークじゃなかったの?
さて、明日も「美術館の隣の図書館」へ通いますから、もう寝ますよ。美術館の方へも行ってみたんですが、志のある企画展ですし、料金も800円と安いので、何度でも見に行けます。来月までやっていますので、時間があればぜひ。
あとねえ、「アダム12」の流れで往時のアメリカ製ドラマ・アニメのネタで、エンディング曲を探して見たんですが、英語のオリジナル動画を見てみると、そもそもアチラさんには「エンディング曲」なんて概念がないようで。
あってもオープニングとエンディングが同じ曲だったり(アダム12、世界の料理ショー)、
映画みたいな「クレジット」だけだったり(トムとジェリー)
エピソードによって最後に流れる曲が違ったり(刑事コロンボ)、
そもそもオープニング曲自体、日本放映時に付け加えたものだったり(チキチキマシーン猛レース)。
ちなみに「奥様は魔女」のオープニング曲は英語版でもあの曲ですが当然、例の「奥様の名前は..」の名ナレーションはついてません。
たぶん、日本でドラマテーマ曲のレコードを出すようになった折、レコードのB面が余ってしまうので、オープニングとエンディングを別にして、2曲収録するようになったのでは?
というわけで、ネタになりませんでしたので、この場を借りてご報告申し上げます。
投稿: ちょんだん! こぶぎ | 2013年8月22日 (木) 01時14分