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星空の映画祭

8月16日(金)、17日(土)

車で山道を走っていると、手書きの小さな看板が目にとまった。

「星空の映画祭↑」

星空の映画祭?

さらに進むと、やはり手書きの小さな看板に、

「星空の映画祭↑」

とある。

やけに気になる。

看板に導かれるままに車を走らせると、暗闇に小さな明かりが見えてきた。どうやら入り口らしい。

入り口には続々と車が入ってきた。

誘導員の指示に従い、駐車場に車を止める。

チケットを買って、奥にどんどん進むと、野外ステージのような、大きな広場に出た。

Photo客席にあたる部分が、階段式になっているが、客席と呼べるほどのものではない。単なる地べたである。

当然、何も用意してこなかったので、草の生えている地べたにそのまま座ることにした。

野外ステージの前方には、大きなスクリーンがかかっている。そして後方には仮設の小さな建物があり、中には大きな映写機がある。

何も知らずに来たのだが、ずいぶんと本格的な映画上映である。

Photo_2そうこうしているうちに、人がどんどん集まってきた。

あっという間に客席がいっぱいになる。

「本日の上映作品は、昨年公開された『レ・ミゼラブル』です」

と、司会者の声。

今年の初めに見て、そのときの感激ぶりはこのブログにも書いたが、幸運にも再び、大きなスクリーンで見ることができるのである。

午後8時になると同時に、明かりが消えて真っ暗になった。

山の中だから、真っ暗になって当然である。

すぐに映画が始まった。

あっという間の二時間半。再び感動さめやらぬまま、映画は終わった。

映画が終わると同時に、観客から拍手が起こった。

立ち上がろうとすると、アナウンスが聞こえた。

「みなさん、空をご覧ください」と司会者。「ちょうどスクリーンの真上に、カシオペア座が見えます」

そういえばこれは、「星空の映画祭」だった。

空を見上げたあと、司会者が再び言う。

「一番後ろには、映画を映しだした映写機があります。デジタルの時代になって、映写機で映画を映すことも珍しくなってしまいました。この機会に是非ご覧ください」

Photo_3立ち上がり、会場の一番後ろにまわり、映写機が置かれている建物に行くと、映写技師と思われる職人肌のおじさんが立っていて、中には、思った以上に大きな映写機が置いてあった。

まるで映画「ニュー・シネマ・パラダイス」とか、「虹をつかむ男」(主演:西田敏行、監督:山田洋次)みたいな世界である。

こうやって、星空の下で、「かけたい映画」をかけ、どこからともなく人がワイワイと集まってくれて、たくさんのお客さんに見てもらい、最後に拍手をしてもらう、というのは、映写技師冥利につきるのではないだろうか。

いや、それが本来の映画の見方、というものだろう。

「ジャベール警部役のラッセル・クロウは、1回目に見たときより、いい演技をしていたね」

と妻にいうと、呆れたように笑い、

「それをいうなら、ファンティーヌが、1回目よりもよかったと思うよ」

と返された。

不思議である。映画なので芝居が変わるはずはないのだが、まるで1回ごとに演技が変わる演劇を見ているようである。1回目に見たときとは、確実に見方が変わっているのだ。

「レ・ミゼラブル」は2回以上見ることをおすすめする。しかもスクリーンで、である。

「明日の上映作品は、『おおかみこどもの雨と雪』です」と、場内アナウンスが流れた。

翌日も、同じ時間、同じ場所に見に行ったことは、言うまでもない。

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