クロダの怪談
そりゃあ、私の文章がクドイことは、私自身がいちばんよくわかってますよ。
クドイ文章ばかり書いているがゆえに迷惑をかけていることについても、いつも反省しております。
しかし、私以上にクドイやつがいたことを、思い出した。
この前の高校のクラス会で久しぶりに会った、クロダである。
高校時代のクロダは、柔道部で、体が大きく、体育会系で、まじめだった。
それによく喋るのだが、彼の話は、クドかった。
私は彼の話をよく聞く方だったので、彼も心ゆくまで、私にクドイ話をしていた。
おかげで彼にとって私は、「話を聞いてくれる存在」と認識されたようだった。
有名なのは、「クロダの怪談」である。
クロダは、クラスで集まりがあったりすると、なぜか必ず怪談を披露した。
その怪談がまた、クドイのだ。
どこで仕入れてきたのか、レパートリーも豊富で、まだ稲川淳二が怪談でブレイクする前だったと記憶するから、言ってみれば時代を先んじていたのである。
そんなことを思い出したのは、先日のクラス会で欠席したスガハラの次のようなメッセージが、会場で披露されたからである。
「『天狗』でのキダちゃんの一発ギャグと、クロダの怪談が忘れられません」
「天狗」とは、居酒屋の名前である。
…ん?居酒屋?おかしいな。
「キダちゃん」とは、級長を務めたキダのことである。この日はあいにく、欠席だった。
彼も、クラスのみんなで天狗に行くたびに、一発ギャグを披露した。
…ん?「天狗に行くたびに」って…?おかしいな。
ともかく、そのメッセージが披露されたとき、それまでまったく忘れていた、
「クロダの怪談」
を、全員がいっせいに思い出したのだ。
「クロダと言えば、怪談だよな」
「おい、クロダ、いまここで怪談を披露しろよ」
「できっこねえだろ!準備してねえよ」
私もまた、
「クロダの怪談」
という言葉で、高校生のクロダが怪談を語るときの、あのクドイ感じを、まざまざと思い出したのだ。
思い出って、面白いなあ。「クロダの怪談」というたった一言で、引き出しが開くんだものなあ。
クロダにくらべれば、私なんて、クドクないんですよ、本当に。
…ま、何の言い訳にもなっていないが。
さて、そんなクロダは、いまや大学の附属病院で部長職に就いているという。
怪談を披露する機会なんて、もうないんだろうなあ。
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