真夜中の電話
9月27日(金)深夜1時半。正確には、9月28日(土)午前1時半。
明けて28日のW大学での発表の準備をしていると、携帯電話が鳴った。
(誰だ?こんな遅くに…)
携帯電話にかけてきた人の名前を見ると、大学時代、「山中の調査」でお世話になった、酒豪のNさんであった。私が大学1年の時、大学院の博士課程1年だったので、先輩である。見た目は華奢な女性なのだが、飲み出すと止まらなくなる。
酔っ払うと、ほうぼうに電話をかけるとは聞いていたが、私のところにかかってきたのははじめてである。とうとう私も被害者になるのか。
「もしもし」
「ひさしぶり~」
「いま、飲んでるんですね」
「ごめん、寝てた?」ふつう、寝ている時間である。
「いえ、起きてましたよ。…まわりが騒がしいですね」どうやら宴会をしているらしい。
しかし、深夜1時半まで飲んでいるとは…。
「いま、別の人に代わるね」
別の人って、誰だ?
「もしもし、ミーシャですか?」男性の声である。
ミーシャ、という言葉で思い出した。大学時代、熊に似ている私を「ミーシャ」と呼んでいた人が1人だけいた。1年上の先輩のSさんである。
「わかりますよ。Sさんでしょう。久しぶりです」
「久しぶりだなあ。何年ぶりだ?」
「10年以上はたってます」
ここまで会話して、なんとなく状況がつかめてきた。NさんもSさんも、大学時代「山中の調査」で一緒だった先輩である。学年の序列からいえば、
Nさん>>>>>>Sさん>私
といった感じ。
しかも、NさんとSさんは、いま、おなじS県で勤務しているのだ。NさんはSさんと再会して嬉しくなって、それで私のところに電話をかけてきたんだろう。
「今日、仕事でNさんと久々に一緒になってねえ。旅館で飲んでるんだが、なかなか解放されないんだ」
「ほかにもいらっしゃるんですか?」電話の向こうで笑い声が聞こえる。
「うん。県職員さんと、うちの同僚の2人」
全部で4人らしいが、あとの2人は、誰だかわからない。
「おい、お前からもNさんを叱ってやってくれよ。いいかげん、大人になったのに、酔って電話したりするのはやめろと」
たしかに、夜中の1時半に電話をかけてくるのは、ふつうは非常識である。
しかし、後輩の私が叱るわけにはいかない。
しばしSさんと話したあと、
「Nさんに代わるよ」と、電話はNさんのもとへ。
「S君と久しぶりに喋って、懐かしかったでしょう?」
「ええ、まあ」
「…ということは、私もいいことをしたってことね」
ただ、深夜1時半ですけど!
「じゃあ次の人!」
今度は誰だ???
「もしもし」
「もしもし、はじめまして。私、県職員の○○と申します。夜分遅くに、たいへん申し訳ありません」
「いえ、そんなことありません」
…まったくの知らない人である。先方の県職員さんにしたって、わけもわからず電話を代わらされて、何を話していいかわからないのだろう。その意味では、私もその人も、Nさんの被害者なのだ。
「はい、次!」と、受話器の向こうでNさんの声がした。
今度は誰だ???
「もしもし」
「もしもし、はじめまして。私、Sさんの同僚の○○と申します。夜分遅くに、たいへん申し訳ありません」
やはり、見ず知らずの方である。
何で夜中の1時半に、見ず知らずの人と話さなければならないのだ?
「じゃあ、Nさんに代わります」再び電話は、Nさんのもとへ。
「じゃあ、またね」
ガチャッ
電話が切れた。
いったい何だったんだ?いまの一連の電話は。
明日の発表は、うまくいくのだろうか。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 曲目(2025.05.11)
- スピーチの極意·後編(2025.02.20)
- 傾聴人生(2025.02.17)
- 熟睡する方法(2025.01.30)
- ご隠居になりたい(2025.01.25)
コメント