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ハードボイルドだど!

小出裕章さんが、作家・松下竜一の第八回竜一忌 で「暗闇の思想に学ぶ」と題する講演を行っていて、それが動画サイトにアップされているのだが、その冒頭で、レイモンド・チャンドラーの遺作「プレイバック」に登場する有名な言葉を引用していた。

If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.

「強くなければ生きられない。優しくなれないなら、生きる価値がない」

小出さんは、この言葉を引用したあと、次のように述べる。

「私も今、この場に、こうして立っているし、みなさんだってこの会場に来てくださっているわけで、生きているわけですね。ですから、たぶん強いのです、私たちは。強いという条件を備えているからこそ、今この場でこうして、みなさんと一緒の時を刻んでいるわけですが、でもチャンドラーは、『優しくなれないなら、生きる価値がない』と書いているんです。いったい、生きる価値って、何なんだろう、と。優しくなるとは、いったい生きるとは、何なんだろうと。私はずっとそのことを自問しながら生きています」

このあと小出さんは、原発事故について語り始める。

私はレイモンド・チャンドラーの小説を読んだことはないが、この言葉は知っていた。

いつか昔、テレビで内藤陳が言っていたのである。

内藤陳、などといってもわからないだろうなあ。

トリオ・ザ・パンチの内藤陳ですよ!

「おら、ハードボイルドだど!」

というギャグで有名な、日本冒険小説協会会長の内藤陳である。

内藤陳は、もともとギャグメンであったこともあり、顔が面白い。

エノケンの最後の弟子だった、ということもあって、舞台の上でのアクションも派手だった。

有名なのは、ガンさばきである。それとタップダンスね。

だが失礼な話だが、決して二枚目ではないのである。

なにしろ、たいへん個性的な顔をしているのだ。

しかし、誰よりも心が二枚目な人だったんだろうな、と思う。

無類の読書家で、ハードボイルド小説をこよなく愛した。その作家の一人が、チャンドラーだったのだと思う。

何でこんなことを思い出したかというと、前に書いた、大林宣彦監督の映画「麗猫伝説」に、内藤陳が出ていたからである。

内藤陳もまた、大林映画の常連なのである。

「悲しみも、惰性になってきたなあ」

そう言って、得意のガンさばきをして、タップダンスを踊る場面。

映画の本筋とは全く関係ないのだが、内藤陳のために作られたシーンである。

でも、今では通用しないダンディズムだろうな。

だから「麗猫伝説」は、絶対に薦められない映画なのである。

※以前に書いて、お蔵入りになっていた文章です。

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