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空色の故郷

10月15日(火)

夕方6時、今日もまた、市内のパブで開かれている、小さな上映会に行くことにする。本当は映画など見ている場合ではないのだが。

今日の映画の1本目は、韓国のドキュメンタリー映画「空色の故郷」(キム・ソヨン監督、2000年)、2本目は、劇映画「ポエトリー アグネスの詩」(イ・チャンドン監督)である。

2本目の映画「ポエトリー」は、私が大好きな映画「シークレット・サンシャイン」(原題「ミリャン」)と同じ監督の作品なのだが、以前に見たことがあったので、今日は1本目の映画だけ見ることにした。

「空色の故郷」は、旧ソ連時代の1931年に、居住地のウラジオストックや沿海州から、中央アジアに強制移住させられた朝鮮族の人たちの苦難の歴史を、生存した人びとのインタビューを中心に描き出す。なかでも映画の中心となるのは、生存者の一人であり、「アジアのピカソ」とよばれた画家、シン・スンナムである。9歳の時に強制移住させられた彼は、朝鮮族の苦難の歴史を30年にわたって描き続け、大作「レクイエム」を完成させる。芸術家としてのシン・スンナムの軌跡は、彼らのたどった想像を絶する人生そのものである。

画面には、実際に強制移住させられた人たちの生々しい証言が次々と映し出される。その多くは高齢であり、今となっては、貴重な証言である。高齢の生存者たちの証言をもとに構成していく手法は、以前に見たドキュメンタリー映画「ひめゆり」を彷彿とさせる(「ひめゆり」の公開は2007年)。

また、最後の数分間は、シン・スンナムが渾身の力を込めて描いた大作「レクイエム」が延々と映し出されるが、これはまさに、映画「愛と哀しみのボレロ」の最後で、時代に翻弄された人びとのこれまでの幾多の苦難を飲み込むかのように、「ボレロ」が演奏される場面と、同じカタルシスを感じてしまう。

いろいろなことを考えさせられる映画だった。

上映終了後、会場に来ていたキム・ソヨン監督とのトークイベントがあった。キム・ソヨン監督は、日本語がとても上手である。そして華奢ながら、とても力強い映画を撮る人だなあ、と、驚いてしまった。つい私も調子に乗って、二つ三つ質問した。

ウズベキスタンに住む二世、三世の人たちは、また新たな苦難に直面しているという。

「ぜひ、この続編も作ってください」

と、厚かましくもお願いした。

すっかりキム・ソヨン監督のファンになった私は、トークイベント終了後、サインをもらったとさ。ミーハーだなあ。

なお、画家のシン・スンナムは晩年、大作「レクイエム」を含む全作品を韓国に寄贈し、現在、韓国の国立現代美術館に所蔵されている。そして2006年、78歳でこの世を去った。

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