よく見つけてきたよなあ
10月14日(月)
やらねばならない仕事があるのだが、まったくはかどらない。
夕方、地元でおこなわれる国際的な映画祭に行くことにした。
といっても、私が行ったのは、映画祭の正式プログラムではなく、映画祭の時期に合わせておこなわれた、小さな映画上映会である。
うちの職場の「映画マニア」たちは、この映画祭に積極的に参加して、イベントなども企画しているようだが、私は、映画についての知識がまったくないので、蚊帳の外である。
恥ずかしいことに、こちらに来て10年以上もたつのに、この映画祭を見に行ったことがなかった。あまりにももったいないので、せめて小さな上映会に行くことにしたのである。
その上映会とは、「韓国の女性監督が撮った映画」という特集である。
韓国では女性監督の活躍する場がまだあまりなく、活動の場がどうしても、独立系の映画や、ドキュメンタリー映画になってしまうのだという。
今日見たのは、「牛と一緒に7泊8日」というフィクション映画と、「2LINES あるカップルの選択」というドキュメンタリー映画。どちらも地味な映画だが、面白かった。
「牛と一緒に7泊8日」は、江原道で年老いた両親と農作業をしながら暮らすアラフォーの独身男性が、耕作用に飼っていた牛と一緒に家出をして、牛を売りさばこうと、軽トラで旅に出る、というロードムービーである。
牛と一緒に旅をしながら、いろいろなことに遭遇するのだが、内容については、ここには書かない。
主人公は牛を乗せて、江原道から、南へ南へとトラックを走らせる。
どのあたりを走っているのか、映像を見ているだけではなかなかわからないのだが、途中でふれあう人々との会話を聞いていると、あるところで突然、その土地の人の言葉が慶尚道訛りになっている。
ああ、いま、慶尚北道まで来ているんだな、ということがよくわかる。
訛りを聞いてどの土地かがわかるなんて、私の語学力もすごいと思いません?
…いや、自慢して失敬。
「2LINES あるカップルの選択」は、子どもができたカップルが、法的に結婚すべきか、あるいは非婚を貫くかについて葛藤する様子を描いたドキュメンタリー映画である。主人公は、監督自身である。こちらも、ドキュメンタリー映画としてとてもよくできていた。
1本目と2本目の間に、トークショーがあった。地元で老舗の和菓子屋さんを営む、8代目の若き職人さんのお話である。
「韓国女性監督映画特集」なのに、なぜ、地元のばりばりの職人さんのトークショーなのか?と、不思議に思ったが、お話を聞いていると、これはこれで、とても面白い。
とくに8代目の、控えめだが確固たる意志を持ったお話ぶりに、思わず聞き入ってしまった。
やはり職人さんのお話は、面白い。
印象的だったのは、自分の開発した和菓子の新作が、テレビの全国ネットや、雑誌で取り上げられるようになった、というお話である。
「よくもまあ見つけてくれる人がいるものです。田舎で変わったモノを作るやつがいると思ってくれているんでしょうね」
積極的に宣伝しているわけでもないのに、見つけてくれる人がいる、というのである。
これは、ここ最近の私のテーマでもある。どこかで必ず「見つけてくれる人」がいるのだ。
そういえば、今日見た2つの韓国映画も、
「よく見つけてきたよなあ」
というくらい、地味な映画である。だが、その良さを見つける人は、必ずいるのだ。
「よく見つけてきたよなあ」
この感覚を、大切にしたい。
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