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冬が来る前に

11月10日(日)

予報では、週明けに雪が降るかもしれないという。

毎年恒例のタイヤ交換も、そろそろ行わなければならない。

雪が降り出し、冬が本格的に始まる前に、今年最後の「カーナビのない一人旅」に行こうと、ふと思い立った。

目的地は、前々から行きたいと思っていた喫茶店である。

Photo森の中にあるこぢんまりとした喫茶店。

笑われるかもしれないが、コーヒーについてほとんど知識がないにもかかわらず、喫茶店の雰囲気が好きなのである。

とくに、高原の喫茶店とか、森に囲まれた喫茶店とか。

できれば、少し早めにこの稼業を引退して、そんな感じの喫茶店を開いてみたい、などと夢想しているのだが、もちろん、家族は猛反対である。というか、できるはずがない、と思っている。

たしかにそうかも知れない。しかし、少しずつだが、コーヒーの勉強を始めているのだ。

目的の喫茶店は、かなりわかりにくい森の中にあったが、日曜日だったせいか、お客さんがとぎれることなく入っているようだった。

とても穏やかそうなご夫婦が、二人でお店を切り盛りされていた。仕事をリタイアされてから始めたのだろうか。

Photo_2窓に向いたテーブルに座ると、森の向こうに、雲におおわれた山がかすかに見える。この付近でいちばん大きな山だろうか。

「何にいたしましょうか」ご夫婦のうちの奥さんが、注文を聞きに来た。

「ブレンドをお願いします」

「かしこまりました」

「とても景色がいいですねえ」

「晴れていればよかったんですが、今日はあいにくの天気で残念です」

「そんなことありません」と私。「こちらでお店を始められてどのくらいたつのですか?」

「来年の1月で丸5年です」

「なんだか憧れます」

「でも最初は、日々の生活に追われるばかりで…。最近になって、ようやく落ち着いてきたという感じです」

「そうですか」

しばらくして、コーヒーが運ばれてきた。

「どうぞごゆっくり」

Photo_3窓の景色を眺めながら、コーヒーを飲み、原稿の校正を行う。

ここ最近のどんよりした気持が、少しずつ晴れていくような気がした。

完全に呆れられていると思うが、やはり私は、「形から入るタイプ」なのだ。

コーヒー2杯分の時間を過ごし、席を立った。

レジのところで、ご夫婦と会話をする。

「この辺もやはり、雪が積もりますか」

「ええ、12月に入ると本格的に降り始めて、3月の中旬頃が、雪どけの時期です」

「雪が降る前に一度うかがいたいと思っていたんです。たぶん、今日が最後のチャンスだろうと思って」

「そうですか。ぜひまたおいでください」

「またうかがいます」はたして、そんな機会はまたおとずれるだろうか。

私は森の中の喫茶店を、あとにした。

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