岡目八目
すごい名言を思いついた。
「企画の趣旨をいちばん理解していないのは、ほかならぬ主催者である」
これまでの経験を思い返してみると、たいていのイベントが、これにあてはまるのである。
いやあ、これで世の中のだいたいのことが説明できるぞ、と、いろいろな人に、自分が考えた言葉だといって得意げに説明していたら、ある人に言われた。
「つまり、『岡目八目』ということですよね」
…おかめ…はちもく…。
そうか、私が言いたかったことは、「岡目八目」ということだったのか。
私が発見していたと思い込んでいた真理は、ずっと前から、短い言葉で言い表されていたのだ。
そういえば思い出した。
黒澤明監督の映画「椿三十郎」の冒頭場面。
血気盛んな藩の若者たちが、人里離れたお堂に集まり、藩の汚職をあばくため、藩の上層部の誰を味方につけるか、密談をしている。城代家老か?大目付か?
単細胞な若者たちは、大目付の言葉をそのまま信じ、大目付こそ、自分たちの主張のよき理解者だと、意見が一致する。
そこに、三船敏郎演ずる椿三十郎が登場。素浪人の椿三十郎は、このお堂をねぐらにしていたところ、この密談を耳にしたのだ。
「ところでおい、盗み聞きってものはいいもんだぜ。岡目八目。話しているやつより、話の本筋がよくわかる」
密談をきかれて、焦る若者たち。
「まあ聞きな。俺に言わせりゃ、城代家老が本物で、その大目付の菊井ってやつは、眉唾だぜ」
「なに?無礼を申すとたたではおかんぞ!」椿三十郎に飛びかかろうとする若者たち。
椿三十郎はまったく動じることなく、静かに語り出す。
「俺はその二人の面(つら)も知らねえ。しかし知らねえからかえって、見かけで迷わされる心配もねえ。…おい、城代はつまらねえ面(つら)してるだろう?…そうらしいな。しかしな、話から察すると城代はなかなかのタマだぜ。てめえがバカだと思われていることを気にしねえだけでも大物だ。
ところでその、大目付の菊井だが、てめえたちは『やっぱり話せる、やっぱり本物だ』なんてとこからみると、こいつはまず、見かけは申し分はねえ、らしいな。しかし、人は見かけによらねえよ。アブねえアブねえ」
かくして椿三十郎は、大目付の菊井こそが危ない人物と判断し、若者たちとはまったく逆の結論に至るのである。
そしてその椿三十郎の予想は的中する。すでにお堂は、大目付の一派に取り囲まれていたのだ。
「岡目八目、ズバリだ」
ここから椿三十郎の活躍がはじまる。
…私がはじめて、「岡目八目」という言葉を覚えたのが、この「椿三十郎」だったのだ。
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