感性の報告会
12月4日(水)
(以下は完全な自画自賛の文章なので、不愉快な方は読まないでください)
今日の「短期留学生帰国報告会」は、大成功だった。
(ちなみに、先週土曜日のイベントも大成功だったので、2連勝である!)
聴きに来てくれた学生、教員の人数は30~40名ほどだったが、用意した教室の席がいっぱいになるほどだった。
4時半からはじまったが、2時間を超過しても、ほとんど席を立つ人がいなかった。
何よりすばらしかったのは、パネラーをつとめた6名の学生たちである。
私の司会など、まったく関係がなかった。
彼らの語る言葉は、誠実で、面白く、そして自分の言葉で語っていたことがすばらしかったのである。
この報告会にこぎつけるまで、準備はけっこう大変だった。
同僚のNさんと二人で企画を立て、議論を重ねながらポスターとチラシを作り、各方面に配布をお願いしたり、ポスターを貼ったりする。
文案は私、ポスターデザインはNさん、そして各方面への宣伝担当は私、パネラーの学生たちとの連絡や調整はNさんである。
次に、どのような会にするかを考える。
本当は、帰国したすべての学生の話を聞きたかったのだが、泣く泣く、6名に絞ることにした。台湾に留学したNさん、中国に留学したT君、韓国に留学したOさん、アメリカに留学したM君とS君、そしてラトビアに留学したNさん。
各人に時間を与えて報告してもらう、という講演会形式ではなく、「大喜利形式」、すなわち、お題を与えて、そのお題に答えてもらう、という形式にしよう、ということになった。
司会は私。さしずめ私は歌丸師匠である。
「留学先での生活はどのようなものでしたか?」
とか、
「勉強でつらかったことは何ですか?」
とか、
「どんな友人ができましたか?」
などである。
先週の金曜日(29日)に、6人に集まってもらって、打ち合わせをおこなった。場所は、本番と同じ教室である。
打ち合わせの過程で、ただ話を聞くのではなく、留学中に撮った写真を何枚か用意してもらい、それにもとづいて語ってもらうことにしたらどうか、ということになった。
検討の結果、写真のテーマを9つ設定した。
「住んでいた場所、部屋の様子」
「ふだんの食事」
「キャンパスや授業風景」
「課外活動」
「休日の過ごし方」
「友人との写真」
「パーティ-」
「いちばん美味しいと思った料理」
「とっておきの1枚の写真」
それぞれの写真にちなんだエピソードを語ってもらう、という趣向である。
各学生から9枚ずつの写真を送ってもらうと、全部で54枚となる。実際は1テーマに2枚や3枚送ってきた人もいたから、全部で60枚くらいである。
本番の前日、送ってもらった写真を、全体の構成を考えながら、並べていく。
それに合わせて、当日の進行台本を作成した。
前日の午前0時過ぎまでかかって、写真の構成と、進行台本を完成させた。
断っておくが、ここまで周到に準備する教員は、この職場にはたぶん私のほかにはいませんぜ。もしほかにいたら、教えてくださいまし。
…とまた、自画自賛。
さて当日。
教室の前のホワイトボードに、大きな世界地図を貼った。
パネラーの6人に、円いマグネットを1つずつ持ってもらい、1人ずつが自己紹介するときに、自分の留学した場所が世界地図のどこにあたるのかを、マグネットを置くことで示してもらう、という、とても凝った演出を考えた。
…うむ。文章で書くとわかりにくいな。
この演出、私はけっこう気に入っているのだが、どのていど伝わったかはわからない。
「生活のこと」「勉強のこと」「人間関係のこと」の3つにテーマを絞って、こちらから質問をして、6人にそれぞれ語ってもらう。
テーマにかかわる写真をスクリーンに映し出しながら、6人がそれにかかわるエピソードを的確に語る。どの話も、面白くて、わかりやすい。
なかでもすばらしかったのは、最後に映し出した「とっておきの1枚の写真」である。
「留学中に撮った写真のうち、もし1枚だけを選ぶとしたら?」というお題で、選んでもらった写真。
6人全員が、見事に私の意図をくんでくれた。
写真がすばらしい、というわけではない。
その写真にまつわる彼らの「語り」が、すばらしかったのである。
どの写真も、留学の体験が、かけがえのない人生の一部であることを実感させてくれた。
もうそれだけで、私にとって、この企画は成功なのである。
2時間の長きにわたる報告会が終わる。
終わってから、短期留学を希望したいという1年生たちが、パネラーの学生たちを取り囲み、矢継ぎ早に質問する。彼らは時間を忘れて話し込んでいた。
「留学したい学生を、掘り起こそう」という、私とNさんの目的は、達せられたのである。
同僚のKさんが帰り際、私に「大成功でしたね」と言ってくれ、それもまた、嬉しかった。
参加した学生の人数は、30名ていどだったが、留学した学生たちの体験談は、確実に、聴いている学生たちの心の深い部分で、共鳴したのだろうと思う。
終わってから、パネラーの学生や、留学したいという1年生たちと、焼き肉屋で簡単な打ち上げをした。
そこでも、ずーっと、留学体験談で盛り上がった。
今日の「帰国報告会」は、「感性の報告会」であった、と思う。
それぞれの土地で、まったく別の体験をした学生たちが、同じ感情を共有し合う。
そしてそれに、聴いている学生たちも、共鳴する。
この「感性の共有」こそが、重要なのだ。感性を共有できる場を作ることが、大人の使命なのではないだろうか。
私とNさんだからこそ、それができたのだろう。
…と、これまた、自画自賛である。
ここまで書いてきて、気がついた。
私がこの報告会でやりたかったのは、笑点の司会者、歌丸師匠のような役回りではない。
むかし、NHK教育テレビで放送していた「YOU」という番組の司会者、糸井重里さんのような役回りであったのだ、と。
そんな役回りが実現できて、またひとつ、夢が叶った、というべきであろう。
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