声に出して読め、宮沢賢治
まことに恥ずかしいことだが、今まで宮沢賢治について、まったく疎かったこともあり、井上ひさし作「イーハトーボの劇列車」に出てくるセリフに、宮沢賢治の作品の言葉がちりばめられていることに、ほとんど気づかなかった。
たとえば、
「こんなことは、じつに稀です」
というセリフは、「革トランク」という短編にくり返し出てくる言葉である。
ちなみに「革トランク」という作品は、一読すると、なんだかよくわからないのだが、宮沢賢治の人生と重ね合わせて読んでみると、じつに味わい深いものとなる。
「イーハトーボの劇列車」を見ていて、私が好きなセリフがあったのだが、それも、詩「稲作挿話」(一〇八二〔あすこの田はねえ〕)の、次の一節だったことがわかった。
「これからの本当の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
ぢゃさようなら」
朗読の教材としてしばしば使われるという、この詩。
声に出して読んでみると、やはりいい。
いや、そもそも宮沢賢治の作品は、声に出して読むと、じつに心地よいのだ。
いまさらながらそのことに気づいたのだが、いささか遅すぎた、というべきであろう。
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