落語「コロンボのコート」解説
12月25日(水)
どうも被害妄想が激しくて、困ったものである。
昨日のブログを読んでくれたからなのかどうかわからないが、「昨日はとんだクリスマスイブだった」「クリスマスなんて関係ないような、ひどい日だった」と、わざわざ私に言ってくれる人が、けっこういた。ありがたいことである。
しかし私の被害妄想は重症で、「それは気を遣って言ってくれたのだろう」と、かえってその言葉を疑ってしまったりするのだ。
私は昔から、
「はは~ん。さては、俺の居ないところで、みんなで寿司を食ってるな」
と思うタイプなのだ。
まったく、厄介な性格である。
今日もこんなことがあった。
お昼休みが終わった午後、卒論の相談に来た4年生のSさんと廊下を歩いていると、
「これ、何ですかねえ?」
Sさんが何かを見つけた。
見ると、漆塗りの立派な弁当箱がいくつも積んである。食べ終わった弁当を積んでいるらしい。
私はピンと来た。
「ああ、これはたぶん、この部局の人たちが、年末で仕事納めも近いからといって、みんなでお昼に美味しいお弁当を食べたんだよ」
「そんなことがあるんですか?」
「以前もそんな光景を見かけたことがあるよ。特別な日とかに、みんなで豪華な弁当を食べたりするらしい。俺は呼ばれたことはないけどね」
「そうなんですか…」
「それに、今日はクリスマスだろう?だからお昼は職場で仲のいい人たちがみんなでちょっと豪華にと、どこかへ食べに行ったりしているケースが多いと思うぞ。俺は呼ばれたことはないけどね」
「そうなんですか?」
「きっとそうに決まってる。俺の居ないところで、みんなで美味いものでも食っているに決まっているのさ」
「先生、それは被害妄想でしょう?」
「そうともいえる」
「私よりもひどい被害妄想じゃないですか!」
Sさんもそうとうな被害妄想を抱えている人だが、そのSさんに呆れられたのだから、私もそうとう重症である。
ま、そんなことを考えているうちに、なんだかもうバカバカしくなってしまった。
昨晩、「とんだクリスマスイブ」だった、私とこぶぎさんとのあいだで、久しぶりにコメント欄で応酬があった。「コロンボのコート」をめぐる落語のパロディである。
野暮だということはわかっているが、少し解説を加えておくと、
「コロンボのコート怖い」は、ご存じ、落語「饅頭怖い」のパロディである。これはわかりやすいだろう。
それに対するこぶぎさんのコメントは、落語「出来心」のパロディである。
さらにそれに対する私のコメントは、落語「がまの油」で使われるマクラのパロディである。元ネタは次の通りである。
「これは頼朝公のしゃれこうべ。近う寄って御拝遂げられましょう」
「ほう、頼朝公のしゃれこうべ。それは本物かい?」
「本物にござります」
「ござりますと来たよ。えー拝見しましょう。こういうのは、なかなかありませんからね。
・・・・・・、あのね。本物だろうね、これ?古い川柳にね、『拝領の頭巾梶原縫い縮め』という川柳がある。それに頼朝公っていう人は俗に大頭と言われるぐらいでね。頭の鉢のでかい人だったらしいね。このしゃれこうべ、ずいぶん小さいね?」
「ご幼少の折のしゃれこうべ」
金原亭馬生「がまの油」より抜粋でございます。
こんなわけのわからないコメント、たぶん誰にも理解されないんじゃないだろうか、と思い、野暮だと思いつつも、解説を加えてみた。
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コメント
主人 もお、知っていることは全部話しました。昨日の「らくごdeクリスマスパーティー」の後片付けがありますんで、今日のところはお引き取り下さい。
刑事 (葉巻を持つ手を額に当てて)おっと、忘れるとこだった。あのー、すみませんが、もう一つだけ聞かせてもらえませんか?
主人 一体なんですか。昨日の出し物は「出来心」じゃなくて「花色木綿」バージョンのの方のサゲだったとか、「頼朝公のしゃれこうべ」といったら「道具屋」のマクラが真っ先に浮かぶだろうとか、そんなことはもうお話ししましたが。
刑事 いやあ、そんなことではないんですが、どうにも腑に落ちないことがあるんですよ。昨日のコメント欄は、クリスマスイブらしくサンタの童話コントを書いたのに、帰ってきたコメントが、クリスマスとは関係ない「コロンボ落語」だったというのが、どうにも分からないんです。
主人 単に、ネタを思いついちゃったから書いたんではないんですか。そもそも、そんなに深く考えて書くようなコメント欄でもないし。
刑事 いやあ、私もカミさんと話していて、急に話題を変えることがあるんですよ。どんな時だと思います? 気まずい時です。カミさんの誕生日にプレゼント買って来る約束をすっかり忘れていた時とか、ね。
主人 警部さん、何が仰りたいんですか?
刑事 いや、大したことじゃないんです。気まずくて話題を変えても、心の動揺は隠しきれないものなんです。選んだネタが「饅頭怖い」ですよ。真犯人(ホシ)は相当怖かったんです。でも、あのサンタ童話のどこに、そんなに怖い所があったんでしょうかねえ?
いやー、お邪魔しました。また伺います。
(後ろを向いたまま、手を振って立ち去る)
投稿: コロンボこぶぎ | 2013年12月26日 (木) 01時19分
犯人 コロンボ君、君は何か誤解しているようだね。
コロンボ 何がです?
犯人 君は僕を犯人に仕立てたいようだが…。
コロンボ 滅相もありません。お気を悪くしたらごめんなさい。刑事なんて、因果な商売でしてね。
犯人 まあそれはよい。仮に、仮に僕が犯人だとしたらだよ。
コロンボ 犯人だなんて思ってやしません。
犯人 仮の話だ。あの落語「コロンボのコート怖い」は、別に何かが怖かったからではなく、「三題噺」からヒントを得て構想した、とは考えられないかね?
コロンボ 三題噺ですって?
犯人 こぶぎさんのサンタクロース童話に、「サンタクロース」「コロンボのコート」、そして「イトーヨーカ堂」が登場するだろう。
コロンボ ええ。
犯人 犯人は、あの童話に登場する3つのお題から連想して、それを「饅頭怖い」に結びつけたんじゃないのか。実際、「コロンボのコート怖い」には、この三つのお題がちりばめられているだろう?
コロンボ なるほど。そういう意味では、つながっていますな。
犯人 それに、「頼朝のしゃれこうべ」の口上がマクラに出てくるのは、志ん生の「火焔太鼓」、三代目金馬の「高田馬場」、馬生の「がまの油」が有名なんだよ。
コロンボ なるほど、さすがお詳しい。
犯人 そもそも犯人は、最初のコメントが出されてから、わずか1時間半であのコメントを書いたんだぞ。僕にそんなことができるはずはないじゃないか。
コロンボ いや、それができるんです。
犯人 どういうことだ?
コロンボ あなたの筆力だからこそ、できたんだといってもよい。
犯人 ずいぶん買いかぶってくれたものだ。たいした想像力だよ、コロンボ君。君は刑事を辞めて、作家になった方がいい。証拠があるのかね?
コロンボ それがあるんです。
犯人 聞こうじゃないか。
コロンボ あなた、つい最近、こぶぎさんのブログの「やどかりブロガー2013」という記事にコメントを書きましたね。
犯人 …。
コロンボ その記事は、このブログのコメント欄に書き散らした、これまでの「創作落語」をまとめた内容のものだった。
犯人 …。
コロンボ あなた、その記事を読んで、落語に対する創作意欲が、ふつふつとわいてきた。
犯人 …。
コロンボ それであなた、童話とは無関係の落語のスタイルを、強引に持ってきたのではないですか?
犯人 それも想像に過ぎん。
コロンボ あなた、サゲの「今度は葉巻が怖い」を思いついたときは、嬉しかったでしょう?
犯人 まあな…そりゃあ嬉しかったさ。
コロンボ ほら、やっぱりあなただ。あなたを逮捕します。
犯人 …アウトレットモールの場所が知られるのが、怖かったんだ…。それで、あんな落語を…。
投稿: onigawaragonzou | 2013年12月26日 (木) 02時28分