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コロンボのコート

この3連休の出来事を、少しばかり。

12月21日(土)

家族が郊外のアウトレットに買い物に行くというので、ついていくことにした。

といっても、さして買いたい服などない。

「そのコート、よれよれだねえ」と妻。「買い換えたら?」

私の着ているコートは、刑事コロンボが着ているような、薄手のコートである。

私はこのコートが、コロンボっぽくて気に入っていて、就職してはじめてこのテのコートを買ったのだが、2年ほどたって、電車の中に置き忘れるという失態をおかした。それで、それに似たコートを買い直したのである。だからいまのコートは、2代目なのである。

どうせなら、刑事コロンボみたいに、もっとよれよれになるまで着続けよう、と思っていたが、薄手なので、本格的な寒さを迎える時期には、いつも寒い思いをしていた。

ということで、コートを買うことにした。

はじめて訪れた郊外のアウトレットは、降りた駅から歩いてすぐという至便の地にあったが、なんともおしゃれすぎて、私が気軽に買えるようなお店は、まったくない。

仕方がないので、アウトレットの隣にある「イトーヨーカ堂」に入る。

やはり落ち着くなあ。イトーヨーカ堂は。

結局、すべての買い物をイトーヨーカ堂で済ませてしまった。

ダウンのコートを買った。素材も軽いし、着てみると暖かい。

「そのよれよれのコート、捨てたら?」と妻。

「いや、春先とかにまた着たいから、まだ捨てない」と私。

それで思い出した。

「刑事コロンボ」に、「逆転の構図」というエピソードがある。

コロンボが聞き込みのために、貧民街にある教会に入ると、シスターが彼を「路上生活者」と間違えて、「そんな汚いコートは脱いで、教会に寄付されたこちらのコートを着なさい」と、強引に着替えさせようとした。

「いやいや、私はこのコートが気に入っているんでね。…それに私、刑事なんです」

警察手帳を見せると、

「あら、まあ、刑事さん!すると扮装して捜査を?完璧ですわ。騙されました」

とシスターが驚く。

私はこのシーンがとても好きなのだが、それくらいによれよれになるまで、このコートを着続けてやろうか、と思っている。

12月22日(日)

夕方、義妹夫婦の家の近くのイタリアンレストランで食事をする。

イタリアンレストランといっても、とてもこぢんまりした店である。3人くらい座れるカウンター席と、4人掛けのテーブル席が3つくらいである。

カウンターの中の厨房には、イケメンの若いシェフと、その助手とおぼしき愛想の良さそうな女性がいて、もうひとり、料理を運んだり注文を聞いたりする学生風の男性がいる。つまり、3人でこの店を切り盛りしているようである。

カウンターには、英語が母語の白人男性のおじさんが座って、ワインを飲んでいた。ビジネスマンのようである。

かたことの日本語が話せるようだが、本当にかたことで、何かと厨房にいるシェフと助手に話しかけているのだが、シェフは忙しくて、それどころではない。

そのおじさんも、日本語で会話するのがかなり大変らしく、難しいときには英語で話しかけている。

メニューを見ながら、「これはどんな料理なのか?」と、シェフに聞いているようである。

シェフは英語が苦手らしく、説明に苦慮していた。

「アウトサイド、カリカリ、インサイド、フワッと」

「…?」

「アウトサイド、カリカリ、インサイド、フワッと」

どうやら、「外はカリカリ、中はフワッとした感じ」というのを、表現したらしい。

結果的にそのおじさんはその料理を注文し、その料理は美味しかったようだったので、万事うまくいったのだが、「やはりこれからは、少し英語を勉強しよう」と、このやりとりを見て、少し思った。

12月23日(月)

新幹線に乗るまで、少し時間があったので、東京駅近くの書店の上にある、文房具屋さんに立ち寄った。

何度か立ち寄っているのだが、そのたびに、買おうかどうしようか、迷っているものがある。

それは、ある会社のボールペンである。

私はこの会社のボールペンをふだん使っているのだが、それはそれは書きやすくて、原稿の校正や、学生の卒論添削のときなど、あまり気が進まない仕事の場合でも、このボールペンを使えば、テンションを上げて仕事をすることができるのである。

いま使っているのは、1000円のボールペンなのだが、その文房具屋に置いてあるボールペンは、同じ会社の、同じ商品名で、「プライム」と呼ばれる、ワンランク上のボールペンなのである。

試し書きしてみると、たしかにすごく書きやすい!

だが価格が、3000円なのである

ボールペンで3000円か…。

いま使っている1000円のボールペンでも、十分に書きやすいしなあ。

いつも買おうかどうしようか迷い、結局見送ってしまうのである。

もうひとつ、この文房具屋に置いてある「紳士なノート」というノート。

このノートが、とても書きやすいのだ。

(書きやすいボールペンに、書きやすいノートがあれば、原稿の構想とか、書き放題だぞ!)

そう思って、一瞬テンションが上がるのだが、値段が1200円である。

1冊1200円のノートか…。

ふと我に返る。

(俺がノートに書くことって、1冊1200円のノートに書くに値するものだろうか?)

そんなたいそうな人間ではないし…。

そう思うと、心がどんよりしてきた。

一度手に取ったノートを、ふたたび陳列棚に戻す。

気がつくと、文房具屋さんでもう30分も経っていた!

(いかん!新幹線に乗り遅れる!)

もうこれを、何回くり返していることだろう。

本とかCDとかDVDとかならば、これくらいの出費は惜しまないのに、なぜ、ボールペンやノートだと、二の足を踏んでしまうんだろうか…。

ここへ来ると、自分の「小物(こもの)」ぶりを、いつも実感させられる。

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コメント

(シャンシャンシャンシャン)

トナカイ おじいさん、次に届け先は誰ですか?

おじいさん うむ、手紙を読んでみるからな、ルドルフや。

ええと、なになに。

「拝啓 はじめまして。小生はしがない大学教員をしておりますが、最近夢も希望もありません。せめては新しい背広を着て、きままな旅に出てみたいのです。愚妻も小生のファッションセンスのなさを嘆いております。プレゼントよろしくお願いします。敬具」

トナカイ で、何がほしいんですか?

おじいさん なりきりピーターフォーク風トレンチコートがほしいそうじゃ。

トナカイ (がくっ)背広じゃないんだ。しかも、手紙の後半は萩原朔太郎のパクリです。

おじいさん トナカイの癖に賢いな、ルドルフは。

トナカイ それほどでも(鼻が赤くなる)

おじいさん しかし困ったのう。ソリに積んであるのは子供向けのおもちゃばかりじゃ。どこかで大人向けのコートを手に入れないと。

トナカイ おじいさま、ほら、あそこに大きなアウトレットモールが見えますよ。あそこなら、フクヤマと同い年の大きなお友達にも似合うコートが見つかりますよ。

(シャンシャンシャンシャン)

トナカイ おじいさま、だいぶ下界に近づいてきました。へえ、このアウトレットには鬼塚タイガーのアウトレットがあるんだ。

おじいさん 福助のアウトレットなんか、オシャレなストッキングばかりじゃな。わしはすっかり足袋しか売っておらんかと思っていたわ。

トナカイ では早速、舞い降りましょう。

おじいさん いや待て、ルドルフや。ここで、アウトレットのメインステージなんかに降りたら、クリスマスのサプライズイベントと間違えられるのがオチじゃ。それに、もし本物のサンタと知れたら、ソリに積んであるプレゼントなぞ、全部なくなってしまうわい。

トナカイ それは大変。よい子の皆んなにあげるプレゼントがなくなっちゃう。

おじいさん ルドルフや、駅の反対側にイトーヨーカ堂が見えるじゃろ。あの屋上に降りれば目立たないから、あちらに降りるのじゃ。

トナカイ それは名案ですね、おじいさま。ちょうど店員さんたちも、おじいさまと同じような格好をしている人が多いから、店内でも目立ちませんね。

おじいさん でも普通、大きなアウトレットモールのそばに大型スーパーがあっても競合するだけじゃが、ここは珍しい所じゃ。

トナカイ そうですね。だからすぐに場所が分かるんですね。駅も大学も近いし。

おじいさん 大体、今日の電話で「アウトレットどこだか分かりました?」なんて不用意に聞くから、すぐさま全国のアウトレット一覧と、イトーヨーカ堂の店舗一覧をクロスチェックして、一店一店、店舗周辺の地図を確認しながら、どこに行ったか調べられるんじゃよ。

トナカイ イトーヨーカ堂は昨年から不採算店舗の整理を進めているから、思ったより店舗数が少ないんです。実質、1時間もかからずに見つかりました。チョロいもんです。

おじいさん 最後に、ふーみんも知りたがっていたNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の「サンタ追跡」ページのリンクを教えてあげよう。ページを開いて、右上にある「English」の文字をクリックすると、日本語表示にも切り替えられるよ。わしがどこに居るか、よい子の皆んなにもリアルタイムで分かるという次第じゃ。それじゃ、よい子のみんな、待っておれよ。

メリークリスマス、ホー、ホッホッホー。

http://www.noradsanta.org/

投稿: こぶぎ童話 | 2013年12月25日 (水) 00時22分

三吉 いいかい、人間ってのはねえ、誰でも怖いものってぇものがあるんだ。ちょうど時間をもてあましていたところだ。おもしれえ、端から怖いものを言ってみな。

八五郎 何だい藪から棒に。

三吉 いいから言ってみなってんだよ。

八五郎 よし!…お、おれは、毛虫が怖えぇ。

三吉 ほう、毛虫が怖えぇのか。じゃ、半ちゃんは何が怖えぇ?

半介 俺はオケラだ。 オケラのやつはゴミだめをほじくるってぇと出てきやがって、あれが気にくわねぇ。俺はオケラが大嫌えだ。三ちゃんは何が怖えぇ?

三吉 俺かい?俺はムカデがいやだねえ。 俺に、あんなに足が沢山あったらどうしようと考えると、むしょうに怖くなるんだ。わらじを買ったっていくらおあしがかかるか分からねぇしな。ムカデにだけはなりたくねぇ。ところで、正ちゃん、お前、さっきから黙っているけど、お前ぇの怖いものはなんだい?

正一 怖いもの?そんなものはこの俺様にはねぇ!この俺様に怖いものがあってたまるかい!

三吉 しゃくにさわる野郎だねぇどうも。怖えぇものがひとつもねぇだとよ。何かあるだろうよ!たとえば蛇なんかどうだい?

正一 へび?蛇なんか怖くねぇ。蛇なんか、俺は頭の痛いときには頭に巻いて寝るんだ。あいつは向こうで締め付けてくれるからとっても気持ちがいいんだぃ。

三吉 じゃ、トカゲとか、ヤモリなんかどうだい?

正一 トカゲ?ヤモリ?あんなもの俺はさんばいにして食っちゃうんだ。蟻なんかも、ごま塩にして食べちまうぞ。

三吉 本当にしゃくにさわるやつだな。じゃ、いいよ、虫やなんかじゃなくてもいいから、嫌いなものはねえのか?

正一 そうかい、それまで聞いてくれるかい?それなら言うよ。俺はねぇ、コロンボのコートが怖いんだ!。

三吉 なに、コロンボのコート?コロンボって、ピーターフォークが演じるコロンボのことかい?

正一 そう、小池朝雄が声を吹き替えしてるやつ。もちろん翻訳は額田やえ子だよ。

三吉 よけいなことは言わなくていいんだよ。

正一 そうなんだ、俺は本当はねぇ、情けねぇ人間なんだ。コロンボのコートが怖くて、見ただけで心の臓が震えだすんだよ。そのままいるときっと死んでしまうと思うんだ。だから、コロンボのコートを着ると足がすくんでしまって歩けなくなっちまうんだ。ああ、こうやってコロンボのコートのことを思い出したら、もうだめだ、立っていられねぇ。そこへ寝かしておくれよ。

(長屋を出る三吉たち)

三吉 聞いたかよおい。

八五郎 聞いたぜ。コロンボのコートだってよ。

半介 あんなものが怖いとはなあ。

三吉 いいことを思いついたぜ。今日はクリスマスだろう?俺たちがサンタクロースとトナカイに扮装して、コロンボのコートをあいつにプレゼントするってのはどうだい。

八五郎 サンタクロースは誰だい?

三吉 もちろん俺に決まってるだろう?

半介 トナカイは?

三吉 おまえら二人だよ!

八五郎 冗談じゃねえよ。俺にサンタクロースをやらせろよ!

三吉 うるせえ!いいからおとなしくトナカイの着ぐるみを着やがれってんだ!

かくしてサンタクロースとトナカイに扮した三吉、八五郎、半介の三人は、正一が寝ているあいだに、アウトレットの隣のイトーヨーカ堂で買ったコロンボのコートを、正一の枕元に置いたのでした。

三吉 かまうもんか、あの野郎が怖がって死んだって、殺したのはコロンボのコートであって、俺たちじゃねぇ。

八五郎 まさか本物の刑事コロンボが来て、俺たちがお縄になるなんてことはねえだろうな?

三吉 何くだらないこと言ってんだ!…おい、奥でごそごそいい出したぜ。野郎起きたんじゃねぇか?障子に穴を開けてそっと見てみようじゃねえかい。

八五郎 おい、大変だ!野郎泣きながら、コロンボのコートを着はじめたぜ!ほんとうはコロンボのコートが怖いってのは、嘘なんじゃぁねえか?。

(障子を開けて)

三人 おい、正ちゃんよぉ!おめえ、俺たちにコロンボのコートが怖いって嘘をついたな!太てぇ野郎だ。おめえ、本当は何が怖いんだい?

正一 今度は葉巻が怖い。

ご存じ、「コロンボのコート怖い」でございました。

投稿: onigawaragonzou | 2013年12月25日 (水) 01時48分

旅上       萩原朔太郎

ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに

投稿: onigawaragonzou | 2013年12月25日 (水) 02時05分

コロンボ  裏は花色木綿と。で、布団の他には何を盗まれた?

ジョン  ええ、トレンチコートが盗まれました。

コロンボ 色は?

ジョン  色は...にほへと。

コロンボ  そうじゃない。

ジョン 警部さんの着てるのと同じ色です。

コロンボ 表はモスグリーンと。で、裏は何です?

ジョン  裏は...花色木綿で。

コロンボ ウチのカミさんもねえ、花色木綿は大好きなんですけどねえ、しかしですねえ、トレンチコートの裏に花色木綿をつける人がどこにいますか?

泥棒 (ウヒャヒャヒャヒャ)

ジョン 誰だ、てめえは? おかしな野郎が笑いながら縁の下から出てきやがった。

泥棒 おう! さっきから黙って聞いてりゃ、なんでも「裏は花色木綿」だって言いやがって。馬鹿ばかしいにも程がある。

コロンボ  (葉巻を持つ手を額に当てて)うーん、縁の下から這い出して来たところを見ると、おまえさんが真犯人のようですね?

泥棒  確かにミーは泥棒には違いないが、この家には何にも盗るものなんかねえ。

ジョン 何も盗らなくったって、人んちに黙って入れば立派な泥棒だ。一体、どこから入った?

泥棒 裏です...

コロンボ 裏のどこだ?

泥棒 裏は花色木綿。

投稿: 三遊亭こぶぎ | 2013年12月25日 (水) 02時46分

「えー、これはかの有名な刑事コロンボのコートでございます。近う寄って御拝遂げられましょう」

「ほう、コロンボのコート。それは本物かい?」

「本物にござります」

「ござりますと来たよ。えー拝見しましょう。こういうのは、なかなかありませんからね。……あのね。これ、本物だろうね?古い川柳に『シスターに、同情される コートかな』というのがある。コロンボのコートというのはね、それくらい使い古されたよれよれのものなんだぜ。このコート、ずいぶん新しいね」

「ご幼少の折のコートでございます」

投稿: onigawaragonzou | 2013年12月25日 (水) 03時11分

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