時がたてば
先日の「短期留学生帰国報告会」の中で、会場から出た質問で印象的だったのは、
「留学して最初の1,2カ月は、ホームシックにかかりませんでしたか?ホームシックにかかったとき、どうやってそれを乗り越えましたか?」
というものである。
ホームシックにかかわらず、留学すると、誰でも、壁にぶち当たるものである。
パネラーの学生たちがほぼ共通して言っていたのは、
「最初は自分の語学力に自信がなく、帰りたいという気持ちが強かった」
というものだった。
では、それをどうやって乗り越えたかというと、学生が口をそろえて言うのは、
「どうやって解決したのか、よくわからない」
という。
「おそらく、時間が解決してくれたのだろう」
と、一様に彼らは答えたのだった。
たぶん、これが真実なのだろう、と思う。
私は留学中に、帰りたいと思ったことはなかったが、ときどき、イライラしたり、なんとなくモヤモヤしたり、息苦しい感じたしたりしたことがあった。韓国語でこれを、「タプタプハダ」という。
原因はよくわからない。とりあえず、勉強がうまくいかない、ということに原因を求めるのだが、たぶんそれは、わかりやすい原因だからであって、本当はもっと複雑な原因が絡み合っていたのだろう、と思う。
学生たちが、
「語学の実力が伸び悩んでいて、帰りたくなった」
というのは、「語学の実力」に原因を求めると、とてもわかりやすいからであって、本当の原因はもっと複雑だったのではないか、と思うのである。
で、その解決方法というのが、「時間がたてば解決する」というものである。
実際に私も、イライラや息苦しさが、ずっと続いたわけではなく、いつの間にかそれが解消されていったのである。
たぶんそれは、「解決した」からではなく、「そうした状況に慣れてきた」からであろうと思う。
たぶん世の中のほとんどのことは、解決しようがなかったり、どうしようもなかったりすることばかりで、最初はそのことばかりが気になって、イライラしたり、息が詰まったりするのだろう。
だが時間がたてば、やがて慣れてくるのである。
でもそれは、留学中にかぎったことではないのだ。ふだんの生活でも、そうであろう。
たとえば今、イライラしていたとする。
そのイライラは、直近の問題に原因を求めているが、それは、そこに原因を求めやすいからである。原因はもっと複雑なはずである。
でも、最初は気になって仕方がなかったことも、時間がたてば次第に慣れていって、鈍感になっていく。
だが時がたてば、また別のイライラがおそってくる。それは同じ原因だったり、別の原因だったり、さまざまである。
そしてそれもまた、次第に慣れていって、おさまっていく。
だいたい、生きているということは、このくり返しではないだろうか。
こうやってみると、これはまるで、痛風の発作と、同じではないか。
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