1979年の緒形拳
今日は特段書くことが思いつかない。
些細なことを思い出したのだが、子どもの頃、日本テレビの土曜夜9時の「土曜グランド劇場」という枠で放映していた、「ちょっとマイウェイ」という連続ドラマが好きだった。鎌田敏夫脚本、桃井かおり主演のドラマである。
東京の代官山を舞台に、まったく客の入らない、小さな洋食レストランを立て直すために、そのレストランの末娘の桃井かおりが奮闘努力する、というドラマである。
いわゆる「レストランもの」で、後の、三谷幸喜の「王様のレストラン」にも連なる系譜のドラマといってよい。
私が小さな洋食屋に憧れるのは、このドラマの影響ではないか、と思う。
で、思いだしたことというのは、ドラマに出てくるこの小さなレストランの名前が、「ひまわり亭」だということである。
私がよく行く、「よく喋るシェフ」が一人で切り盛りしている小さな洋食屋と同じ、「ひまわり」の名を冠した店名なのである。
町の小さな洋食屋さんは、「ひまわり」を意味する店名をつけると、なんかいいことがあるのか?いっぺん調査してみる必要があるな。
ね?些細なことでしょう?
このドラマで、料理長を演じていたのが、緒形拳である。
そして、桃井かおりの姉で、レストランを経営するこの家の長女が、八千草薫であった。
「放浪の料理人」である緒形拳が、店の立て直しのために、たまたまこの店に雇われることになるのだが、緒形拳と八千草薫は、しだいに惹かれあっていく。
もちろんこのドラマはコミカルな内容なので、あくまでも、二人にほのかな感情が芽生えるというていどに過ぎない。
それでまた思い出した。
この二人は、向田邦子脚本のNHKドラマ「阿修羅のごとく」でも、夫婦役で共演していたのだ。
さらに調べてみると、「ちょっとマイウェイ」と、「阿修羅のごとく」は、同じ1979年に放送されていた。
同じ年に、緒形拳と八千草薫は、タイプのまったく異なる2つのドラマで、相手役として共演していたのだ。
当時、リアルタイムでこの2つのドラマを見ていた人は、どんな感じだったのだろう。
そればかりではない。
同じ1979年に公開された今村昌平監督の映画「復讐するは我にあり」にも主演している。この映画で緒形拳は、連続凶悪殺人犯を演じている。
1979年当時、緒形拳は、どんだけドラマや映画に出まくっていたんだ?
前年の1978年にはTBSの森村誠一シリーズ「青春の証明」で、犯人を執拗に追いかける刑事役を熱演している。私はこのドラマを、リアルタイムで見ていた。さらに同じ年、松本清張原作の映画「鬼畜」にも主演している。
1979年前後の緒形拳は、役者として、主役をはらない日はないくらい、まさに脂ののりきった時期だったのだ。
今の私より、ちょっとだけ若い緒形拳。
あらためて緒形拳の役者としての凄さに、思いを致さずにいられない。
さて、その「ちょっとマイウェイ」の主題歌、「夜明けのマイウェイ」は、今ではほとんど知られていないが、隠れた名曲である。
(この記事のタイトルは、ある歌のタイトルや映画のタイトルをもじったものです。わかるかな?)
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