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6時間半経った!

1月10日(金)

夕方6時前、仕事部屋に戻ると、同僚からメールが来ていた。

「ご相談があり、何度かうかがいましたが、不在のようでした。6時頃まで仕事部屋におりますので、内線に電話ください」

うちの職場で「最も多忙でつかまりにくい同僚」からのメールである。

今日は卒論相談があったり、他の場所で油を売ってたりして、仕事部屋を不在にしていたことが多かった。

慌てて内線に電話をするが、電話に出る気配がない。

(もう帰っちゃったのかな…お子さんもまだ小さいと聞いていたし)

時計を見ると、6時10分前である。

しかし、ここであきらめるわけにはいかない。なにしろ「最も多忙でつかまりにくい同僚」なのだ。今日をのがすと、次にいつ会えるかもわからない。

念のため、かなり離れた場所にある、その同僚の仕事部屋に行ってみることにした。

すると、その同僚がいた。どうやら電話の呼び出し音が鳴らなかったらしい。

(よかった)

ある用件について話したあと、話題は職場のことや、学問のことなど、さまざまな分野におよぶ。

本当に久しぶりに、その同僚とじっくり話をした。

そういえばむかし、やはり同僚だったAさんの呼びかけで、私とその同僚と3人で、「それぞれの学問についてとりとめのない雑談をしよう」という会を、Aさんの仕事部屋で定期的に行ったことがある。通称「茶話会」である。ひとときのあいだ、職場の愚痴を忘れ、専門分野の違う者同士が学問についてとりとめのない話をするこの会は、刺激的だった。

この「茶話会」は数回続いたが、3年前にAさんは職場を変わってしまったあとは、行われなくなってしまった。「最も多忙でつかまりにくい同僚」とこれだけさまざまな話をしたのは、その「茶話会」以来である。

ふと気がついて時計を見たら、深夜0時半である。

深夜0時半ですよ!飲まず食わずで、6時間半も喋っていたことになる。

「え?もうそんな時間?」と同僚。「時計を見ないようにして喋っていたんで、気づかなかった」

それだけ、話に夢中になっていた、ということである。しかもその間、ご家族に連絡をとる、というようなこともなかった。大丈夫なんだろうか、と少し心配した。

「なんか、このままだと朝まで続きそうだね」と同僚。「でもあなたとなかなか話をする機会がなかったんで、久しぶりに話せてよかった」「最も多忙でつかまりにくい同僚」は、満足そうだった。

「じゃあ、今度合宿でもしますか」と私は冗談を言って、仕事部屋をあとにした。

仕事部屋を出て、ふと思う。

「6時頃までは仕事部屋にいます」という最初のメールは、どういうことだったのだろう?

帰るつもりではなかったのだろうか?

謎である。

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