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コロンボのスピーチ

「刑事コロンボ・死者のメッセージ」は、シリーズの中で、目立ったエピソードというわけではないが、隠れた名篇かもしれない。

犯人は、老齢の女流ミステリー作家。愛する姪を殺した、姪の夫に復讐するため、彼を金庫に閉じ込めて窒息死させてしまう。

三谷幸喜脚本の「古畑任三郎」シリーズの「死者からの伝言」(第1シリーズ第1回、犯人役:中森明菜)と、「最後のあいさつ」(第1シリーズ第12回、犯人役:菅原文太)、「偽善の報酬」(第2シリーズ第5回、犯人役:加藤治子)の3つのエピソードは、「刑事コロンボ」のこのエピソードの影響を強く受けているものと思われる。

それはともかく。

このエピソードの中でとりわけ印象的なのは、犯人である老女流作家の講演会を聴きに訪れたコロンボが、彼女のとっさの機転で、特別ゲストとして壇上に引っ張り出され、突然、短いスピーチをする羽目になる、という場面である。

このスピーチがすばらしい。

「あたくしは、自分の仕事が、大好きでしてね。憂鬱になることなんぞありません。また、世界中に犯罪や殺人犯が満ちあふれているとも思いません。

みなさんのようないい方がいっぱいいらっしゃる。刑事をやってたからこそ、みなさんにもお目にかかれたわけです。

あたくしは人間が大好きです。

今まで出会った殺人犯の何人かさえ、好きになったほどで。

時には、好意を持ち、尊敬さえしました。

やったことにじゃありません。「殺し」は悪いに決まってます。

しかし、犯人の知性の豊かさや、ユーモアや、人柄にです。

誰にでも、いいところはあるんです。ほんのちょっとでもね。

これは刑事が言うんだから間違いありません。

失礼しました」

割れんばかりの拍手が起こり、コロンボは演壇を下りる。

もちろんこれは、老女流作家に対して自首を勧める意味を込めたスピーチなのだが、それ以上に、コロンボの人間に対するまなざしや、仕事観が力強く語られている。シリーズも終盤にさしかかり、コロンボのこれまでの幾多の犯人とのやりとりが、「人間に対する関心」に裏打ちされたものであることが、ここで初めて明らかにされるのである。

文字では、このスピーチのすばらしさは表せない。額田やえ子の翻訳と、小池朝雄の吹き替えという幸福な出会いにより、このスピーチが、コロンボの揺るぎない信念を吐露するまたとない場面となったのである。

それにしても、小池朝雄の「語り」に憧れる。

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コメント

Columbo "Try And Catch me"(1977) http://www.yourememberthat.com/media/11416/Columbo_Likes_His_Job/#.UuhEG7RUuUk

スピーチ原文はこちらのページの下の方
http://www.columbo-site.freeuk.com/favoritescenes.htm

投稿: ヒアリングこぶぎ | 2014年1月29日 (水) 13時06分

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