さよならだけが人生だ
1月14日(火)
新年明け授業初日。
映画「幕末太陽伝」を監督した川島雄三は、45歳で急逝した。
45歳といえば、いまの私と同い年である。
川島雄三の生前の口癖は、「さよならだけが人生だ」であったという。
この言葉は、周知の通り、井伏鱒二が「勧酒」という唐代の漢詩の、「人生足別離」という部分を、「さよならだけが人生だ」と意訳したことで広まった言葉である。
病を抱えていた川島にとって、くり返し口ずさむべき言葉だったのだろう。
川島が監督した「幕末太陽伝」を見ても、どこか、諦念といったものが感じられる。
人は、別れが悲しいといい、名残惜しいと口ではいうが、実際、はたしてどれくらいの人が、本気でそんなことを思っているのだろうか。
大部分の人にとって、そんなことはすぐさま通り過ぎてしまうていどのことなのではないか。
実際、時間が経てば、そんなことなどすっかり惰性になってしまうのだ。
日々の生活に追われれば、そうなるのだろう。
情の深い川島は、そんな人びとの人生を、「重喜劇」という映画を作り続けることによって、笑い飛ばしたのではないだろうか。
人間の情の深さなど、釣り合うはずもないと思っていたのだろう。
「軽やかに生きる」とは、自らがもっている情の深さを韜晦(とうかい)し、頓着しないがごとく笑い飛ばすことにあるのではないか、と思う。
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