ザ・思春期
中1のときは、1年C組だった。
席が隣同士だったサノ君と仲よくなり、後ろの席で机を並べていたチバさんとナカヤマさんの二人とも、仲よくなった。
私を含めたこの4人が、仲良しグループだった。
チバさんとナカヤマさんは、バスケ部である。
二人に関するエピソードは、以前に書いたことがある(「ナカヤマさん」「もし中学校の合唱部の顧問だったら」)。
どれくらい仲がよかったかというと、うちの中学では、1年生の最後に学年文集を作るのだが、そこに、チバさんとナカヤマさんが、4人が仲よく歩いている似顔絵イラストを描くぐらい、仲がよかったのである。
つまり学年全体に、仲のよさを表明したことになる。
2年生になって、クラス替えがあった。
私とナカヤマさんは、同じE組になったが、サノ君はD組、チバさんはC組である。
2年E組もなかなか面白いメンバーが集まっていて、すぐに仲良しグループができた。E組には、ナカヤマさん以外にも、クロサワさん、ウラノさんがバスケ部に所属していて、毎日昼休みに、彼女たちが中心になって、男女の仲良しグループで体育館に忍び込んで、バスケットボールをすることになった。
私はバスケットボールがまったくの苦手だったが、ナカヤマさんになんとか気に入られようと、かなり必死にその仲良しグループにまじって、一生懸命バスケットボールを練習した。
クラスが別になってしまったチバさんとは、最初は廊下ですれ違うたびに、いろんな話をしていたのだが、そのうち、廊下ですれ違っても話しかけてくれなくなり、そればかりか、あんなに仲のよかったナカヤマさんとチバさんも、話をしているところをほとんど見ることがなくなってしまったのである。
原因がどこにあったのか、よくわからない。
ナカヤマさんは、「なぜチバちゃんが私を避けるのか、わからない」と私に言ってきたが、私にも、その理由がわかるはずはない。
ただ単に、ナカヤマさんが、E組のクラスメートと仲よくなったので、チバさんが、ナカヤマさんに近づきがたくなったのかもしれないと思った。意外と、そのていどの理由だったのだろうと思う。
なにしろ、E組の仲良しグループは、毎日昼休みに体育館に忍び込んでバスケットボールをするくらい仲がよかったのだ。チバさんは、そこに入り込めずに、しだいにこちらを避けていったのだろう。
昼休みに仲良しグループに囲まれているナカヤマさんにとっては些細に思えることが、チバさんにとっては、深刻な問題だったのかもしれない。
自意識過剰の思春期ならではの出来事ともいえる。
3年生になって、私とサノ君はA組、ナカヤマさんはE組、チバさんはB組となった。
同じクラスになったサノ君とは、ふつうに仲がよかったが、1年生の時ほど仲がよいというわけではなかった。ナカヤマさんはしだいに私に話しかけなくなり、チバさんに至っては、廊下ですれ違っても無視されるほどになってしまった。
結局、1年生のときの仲良し4人グループは、卒業のときには、すっかりバラバラになってしまったのである。
このときの体験がトラウマになって、仲良しグループほど実は脆いものなのではないか、と、その後の私の心の中に影を落としていくことになるのだが、これも思春期によくあることかも知れない。
その後、チバさんとは成人式のときに会ってふつうに話をしたが、それ以降、いまはどうしているか、まったくわからない。
サノ君とナカヤマさんとは、15年くらい前の同窓会で、一度会ったきりだが、それ以降、いまはどうしているか、まったくわからない。
そんな思春期の、思い出話。
ま、今となってはどうでもいい話なのだが。
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