無重力版ワンシチュエーション映画
1月1日(水)
元旦の午後、実家の近くにある映画館へ、映画を観に行く。
映画評論家の町山智浩さんがラジオで絶賛していたので、見に行くことにしたのである。
アバター以来の3D映画体験である!
昨年、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」という映画を、3D映画だと思い込んで、ずーっと3Dメガネをかけながら観ていたのだが、見終わったあと、その映画館は3D用の映画館ではなかったことを知った。つまり、たんにふつうの映画を、3Dメガネをかけながら鑑賞していた。だから正確に言えば、これは3D映画体験ではない。
今回は、事前に3D映画であることを確認し、3Dメガネをかけて鑑賞した。
結論。この映画は、劇場で、しかも3Dで見なければ、意味がない。
まるで自らが宇宙で無重力状態にいるような体験をすることができる。
ストーリーは、「宇宙ゴミ」によってスペースシャトルが壊され、宇宙空間に放り出されてしまった乗組員・ライアン(サンドラ・ブロック)が、宇宙ステーションを乗り継ぎながら、地球に帰還することをめざす、という話。
よけいな背景を語ることなく、ひたすら、無重力空間で起こるさまざまな困難と、それを克服する様子を、ノンストップで描いていく。
そのおもしろさのみを追求した、まぎれもない傑作である。
ノンストップ・ワンシチュエーション・アクション映画、といったらよいか。黒澤明監督の幻の映画「暴走機関車」を彷彿とさせる。
主演のサンドラ・ブロックがすばらしい。
観ていると、自分も宇宙空間にいるような気がして、息詰まる場面が多いが、その緊張を緩和させる役割を果たすのが、同じ乗組員の一人、マットを演じた、ジョージ・クルーニーである。
マットは、宇宙空間に投げ出されてパニックに陥ったライアン(サンドラ・ブロック)をなんとか落ち着かせようと、通信を使って語りかけていくのだが、それがなんというか、アメリカンジョークというか、欧米人のオヤジ特有のオヤジギャグというか、とにかくそういった言葉を連発するのである。
「この非常事態に、オッサン、なんでつまんないギャグなんか言ってんだ?」
と、観ている私は、最初は少しイライラするが、その「つまらないギャグ」が、実はライアン(サンドラ・ブロック)の心を落ち着かせる役割を果たし、ライアンは、マットに心惹かれていくのである。
なるほど、そういうものなのかねえ。欧米人特有の、アメリカンジョーク的なオヤジギャグに、世の女性は意外と心惹かれるのかも知れない。
まあそれはともかく。
無重力空間で緊迫した状況が続くが、ところどころに「笑い」もあって、それが、緊張感を緩和する役割を果たしている。
上映時間は91分と、ふつうの劇映画からすると短いが、90分の「脳内無重力体験」は、それだけで濃密で、見終わったあと、ヘトヘトになる。
正月のテンションで観るには、じつにふさわしい映画である。
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