ここはひまわり通り
1月17日(金)
お昼に、「よく喋るシェフ」の店に行く。
「今日もお一人ですか?」
「ええ。いつだってそうですよ」と笑いながら私。
入口側のテーブル席に案内された。奥のテーブルに2人組の女性客がいた。
先客がカウンターに1人いて、食事をしながらシェフと喋っている。
(今日は、ランチだけ食べて、帰ろうかな…)
ランチがもうすぐ食べ終わるかな、というころ、シェフがカウンターの先客との話を少し中断して、コーヒーとケーキを出してくれた。
「どうぞ。これでも食べて、元気を出してください」
時間稼ぎか?どうも、私を帰さない作戦らしい。
カウンターの先客が店を出ると、シェフは私のところに来てお喋りをはじめた。
奥のテーブルにいる女性客におしりを向けて、ずーっと喋っている。
今日の話題は、「昔のプロレス番組」である。
ジャイアント馬場、アントニオ猪木、デストロイヤー、ミルマスカラス…。
ひとしきりプロレスの話をしたあと、ひとつ、前から気になっていたことを、シェフに言った。
「隣の定食屋さんの名前、『ひまわり』ですよね」
「ええ」
「このお店の名前も、ひまわりの学名を意味する言葉ですよね」
「そうです」
「このあたり、ひまわりと何か関係あるんですか?」
「いいえ、関係ありません。おそらく隣の店は、この店の名前の意味なんかわからずに、『ひまわり』という名前をつけたんでしょう」
「そうですか」
つまり、「ひまわり」という意味の名前を持つ店が並んでいるのは、まったくの偶然だというのだ。
「前々から思っていたんですけど」と私。
「何でしょう」
「ひまわりを意味する名前の食堂が並んでいるから、この店の前の通りを、『ひまわり通り』としたらどうでしょうね」
「なるほど、それはいいですね。そうすれば、もう少しお客さんが入るかも知れない」
「そう思います」
「でも、もう一つか二つ、ひまわりにちなんだ名前のお店があればいいんですがね」
「それも考えたんですよ」私は続けた。「ひまわりを意味する各国の言葉を店の名前にして、お店を出したらどうか、と」
「なるほどねえ。それはいい考えですねえ」
ひととおりお喋りが終わり、お店を出た。
問題は、この通りにどんなお店を出すかだな。この人通りの少ない場所に、お店を出す人なんかいるだろうか。
そうか!自分が出せばいいのか!
この稼業を引退したら、この通りに、「サンフラワー」という喫茶店を出したらどうだろうか。
そしてそのときに、この通りは晴れて「ひまわり通り」になるのだ。
そのときまで、シェフはこの店を続けてくれているだろうか。
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