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詰めがあまい学年

2月12日(水)

午前中、身体が鉛のごとく動かなくなり、午後は仕事部屋に来る学生の対応に追われる。

この稼業を続けていると、それぞれの学年ごとに特徴がある、ということに気づく。

これは本人たちにも直接言っていることなのだが、昨年3月に卒業した学年は、「詰めがあまい学年」である。「詰めがあまい」学生が揃っていた。

誤解のないように言っておくが、この「詰めがあまい学年」とは、決して非難しているのではなく、私なりの愛情表現である。

先日、東京に就職したN君が私に会いに来た、という話は、ここに書いた

そのとき、私にお土産を持ってきてくれたらしい。

しかし、お土産を私に渡すのをすっかり忘れてしまって、それに気がついたのが、帰りの最終の新幹線に乗る直前だったという。

この時点で、すでに詰めがあまい。

たまたま在学中のFさんが、N君と一緒に駅に向かっていたので、N君は帰り際、Fさんに「これを先生に渡しておいて」と、お土産をFさんに託した。

数日後、Fさんが「卒論発表会」のレジュメの添削の件で、私のところに来たとき、

「あ!」と叫んだ。

「どうしたの?」と聞くと、

「先日N君がこちらに来たときに、N君が先生にお土産を渡すのを忘れたといって帰りがけに私に預けていったんですが、そのお土産を、今日持ってくるのを忘れました」という。

これもまた、詰めがあまい。まさに「詰めのあまさ」の連係プレーである。

この3月に卒業予定のFさんは、すでにこちらのアパートを引き払い、隣県にある実家に戻ってしまったので、大学にはめったに来ないのだ。

「今度でいいよ」

というと、

「いつになるかわかりません」

という。果たして私は、N君からのお土産を、受け取れるのだろうか。一生受け取ることができないような気がする。

もうひとり、在学中のOさん。

卒論発表会のレジュメ提出の締切が今日である。

私は念のため、事前に添削した上で、提出してもらうことにしているのだが、Oさんはギリギリになって持ってきた。

それはよくあることなので、別にかまわない。

卒論発表会のレジュメは、B4サイズの縦書き1枚にまとめて、担当の先生の研究室に提出しなければならない。

B4サイズ1枚にまとめる、とはどういうことかというと…。

まず、ワープロソフトで、A4サイズ縦書きに設定して、原稿を2頁分作成する。

これを、プリントアウトする。すると、A4サイズ2枚分の原稿がプリントアウトされる。

…ここまではわかりますか?

これをB4サイズ1枚の原稿にまとめるにはどうしたらよいか、わかりますか?

コンビニのコピー機などの上に、A4サイズ2枚の原稿をを並べて、A3サイズにする。

コピー機の紙のサイズをB4に設定する。

倍率を、「A3→B4」になるように、「86%」に設定する(「86%」のボタンを選択する)。

コピーのボタンを押す。

…これで、B4サイズ1枚のレジュメが完成しますね。

これを、担当の先生のところに提出するわけです。

ところがOさんは、この作業が、まったく理解できない、という。

「どうやっていいのか、全くわかりません」

「わからないの?」

「ええ」

「じゃあ、コピー機というのは、知ってるよね」

「知ってますよ!」

「使ったことある?」

「使ったことありますよ!だけど、倍率のことはわかりません。そもそも、A4とかB4とか、紙のサイズのことがよくわかりません」

ええええぇぇぇぇぇ!

私は驚いた。

仕方がないので、コンビニまでついて行くことにした。

「教えたとおりにやってみなさい」と私。あらかじめ段取りを教えておいた。

私が横で、わざと黙って見ていると、Oさんは、コピー機の画面とにらめっこしながら、倍率「141%」のところを選択しようとしている。

「ちょっ!おいおいおい!違うよ!それじゃあ拡大されちゃうよ」

「あ、そうですか…もう、どうしていいかわかりません」

そういいながらも、最終的に、なんとかB4サイズ1枚のレジュメが完成した。

「私ひとりだったら、絶対にできませんでした」とOさん。

まるで「はじめてのおつかい・コピー機編」である。

だんだんわからなくなってきた。

A4の原稿2枚を並べてA3サイズにしたものを、縮小コピーをかけて、B4サイズ1枚のレジュメにする、という作業は、ふつうの人にとっては難しい作業なのだろうか。

単に私が、やたらとコピーとか印刷にこだわっている人間だから、他の人も当然できると思っているにすぎないのだろうか。

自分がわからなくなってきた。

だが間違いなく言えることは、彼らを「詰めがあまい学年」として生涯忘れることがないだろう、ということである。

「ご隠居」が「八っつぁん」に、「しょうがないねえ」と、つい言ってしまうような、そんな学年として、である。

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