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鴨肉の焼き方

2月4日(火)

お昼、「よく喋るシェフ」のお店に行く。先週金曜日のリベンジである。

「先週の金曜日は気を使っていただいてありがとうございました」と私。

「いえいえ」とシェフ。

基本的に、美味い料理をつくる人は、機転が利く人なんだな。

カウンターに座ってランチを食べながら、少しだけ、シェフの「料理論」を聞く。

「お客さんのペースに合わせていたら、いい料理なんか出せません」とシェフ。とくにコース料理は、料理を出すタイミングというのが、難しいらしい。

「たとえば、鴨肉」とシェフ。「鴨肉を焼いたら、すぐに切らずに、20分くらい、温かいところに置いておかなければならないんです」

「どうしてです?」

「すぐ切ると、肉汁が出てしまって、旨みがなくなってしまうんです。肉の色も悪いしね。ところが20分くらい温かいところに置いておくと、そのあいだに、肉汁を閉じ込めることができて、肉の色も赤みがかって、美味しくなるんです」

「ほう」

「だから、鴨肉を注文される方には、20分とか30分とか、待ってもらわなければいけません」

「なるほどねえ」

「素材によって、扱い方ってのが違うんです」

素材に合わせてその良さを引き出す、という点において、料理も教育も同じだ、と思ったのだが、あまりに陳腐な言い回しなので、口に出さなかった。

「しかし今のこの仕事、非人間的ですよ」シェフが続ける。

「どうしてです?」

「だって、1週間のうち6日、この狭い厨房の中に、朝9時から夜11時までいるんですから」

「月曜日はお休みでしょう?お休みの日は何をしているんです?」

「午後からは、1週間分の買い出しと、仕込みです」

結局、人生のほとんどの時間を、この厨房で暮らし、料理のことを考えて生きているのだ。

私には、口を開けば「いやだいやだ、こんな仕事やめて、楽な仕事をしたい」と、愚痴る。

だが本当にイヤなら、とっくにやめているのではないか、とも思う。

「こっちだって、客を選びたいですよ」とシェフ。「でも、そんなことを考えるオレって、ダメだなあ、と思ったりもして…。オレも落ちぶれたよなあ」

悩むポイントは、私も同じである。

「いやだいやだ」といいながら、これがオレの仕事だと自分に言い聞かせつつ、シェフは今日も、料理を作りつづけるのだ。

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