良縁
3月10日(月)
夜7時。5年前の卒業生であるIさん、Mさんと、卒業以来はじめて、会うことになった。
きっかけは、Iさんがメールをくれたからである。
Iさんが、スペイン料理の店を選んでくれた。ワインを飲みながら、いろいろと話をする。
5年前の卒業生には、いろいろな思い入れがある。
私が韓国に留学中だったため、卒業論文をなんと!スカイプで指導した。
そして、卒業式を見届けることができなかった学年でもある。
とくにIさんには思い入れがある。
Iさんは、いよいよ明日から社会人となるという5年前の3月31日深夜に、私にメールをくれたのである。
これについては以前、このブログにも書いたことがある。
そのメールに感激したんだぜ、ということをIさんに話すと、
「全然覚えてません」
という。
メールを受け取った方は5年経った今でも覚えているのだが、送った方はすっかり忘れている、というのが、なんか面白かった。
IさんもMさんも、5年前の印象と、ほとんど変わっていないので、安心した。5年ぶりだが、まるで昨日の話の続きを話すがごとくである。
二人が私にプレゼントをくれた。
「良縁」という名の日本酒である。Iさんが吟味して選んだ銘柄である。
「『良縁』という名前がいいでしょう?私たちを言い表しているみたいで」とIさん。
たしかに、この学年は、「良縁」に恵まれた学年だった。Iさんはとりわけそのことを実感しているようだった。
「『良縁』か。いい言葉だねえ」と私。「韓国に住んでいるころ、『因縁』という言葉を頻繁に聞いたんだ。『こうして会えたのも、何かの因縁だ』とか、『因縁があれば、また会えるでしょう』とか。それ以来、『因縁』という言葉が好きになってねえ」
「へえ、日本だと、『因縁』という言葉は、あまりいい印象ではない感じがしますよね」
「そうだね。韓国ではふつうに使う言葉なんだ。でも『因縁』なんて、自分で作るものなんじゃないだろうか」
「そうですか」
「どこにいようと関係ない。その気になれば、その縁は続くんだと思うよ」
「そうですよね」
気がつくと、夜11時をまわっていた。外は雪がずっと降り続いていた。
「あっという間ですねえ」
お店を出て、タクシーを拾う。
「こんど、仕事の愚痴とか、メールしてもいいですか?」
「もちろん。いつでもメールくださいよ」
「先生もお元気で」
固い握手を交わしたあと、二人は最終列車に乗るために、慌ただしくタクシーに乗り込んだ。
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