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「日の名残り」再見

カズオ・イシグロ原作、ジェームズ・アイヴォリー監督の映画「日の名残り」(1993年公開)を、じつに久しぶりに見た。

やっぱり良いなあ。じつに丁寧な作りの映画である。

アンソニー・ホプキンスと、エマ・トンプソンがいい。

なかでも、アンソニー・ホプキンスの抑えた演技が、じつにすばらしい。

以前に書いたあらすじを引用する。

「謹厳な執事・スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)は、厳格なまでにプロ意識をもって執事の職務を遂行する。使用人同士の恋愛が禁じられている執事の世界で、彼は女中頭であるミス・ケントン(エマ・トンプソン)に深い友情を感じながらも、それを決して表に出すことなく、職務に忠実な執事であり続けるのである。

やがて時が過ぎ、長らく仕えていた主人が没落し、新しい主人に仕えるようになったスティーブンスは、結婚して引退したかつての同僚、ケントンのもとを訪ねる。新しい主人の下でもう一度仕事をしようと説得するためである。2人の再会の場面は、スティーブンスとケントンの両者の、決して明かされることのない思いとも相俟って、じつに印象的である。」

あらためて映画を見てみてわかったのだが、最後の場面、すなわち、二人が再会する場面が、小説とはやや異なっていた。

原作に比べて、映画の方が、スティーブンスのセリフが、極力抑えられている。

原作の方は、どちらかといえば、スティーブンがやや饒舌なのである。

個人的には、映画版の方がよい。

結婚して「ミセス・ベン」になったかつての旧友、ミス・ケントンから、じつに久しぶりに手紙が送られてきたスティーブンス。

ミス・ケントンの手紙には、「ダーリントン卿のお屋敷で働いていた頃が、いちばん幸福だった」と、書いてあった。それは、現状の生活に不満があるともとれる内容だった。

その手紙を受け取ったことがきっかけとなって、スティーブンスは休暇をとり、20年ぶりにミス・ケントンに会いに行くのである。

道中、スティーブンスの頭の中で、「あの頃のように、また一緒に、屋敷に仕える身として仕事をしたい」という思いが、どんどんとふくらんでゆく。

だが、実際にミス・ケントンに会ってみて、その願いは、ミス・ケントンの「ある発言」で、見事に打ち砕かれる。

そこで、彼の頭の中でふくらんだ「思い」は、急速にしぼんでいくのである。

そのあたりの表情やしぐさを、アンソニー・ホプキンスは、見事に演じている。

地味な内容だが、細部にわたって、じつに丁寧な演出をしている映画だと思う。

こういう映画こそ、何度もくり返し見るべきなのだ。

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