ああ!グリーンピースご飯
ご飯を食べるスピードが、昔から遅い。
ほかの人と食べているときは、なおさら遅い。
保育園の時からそうだった。
私が通っていた保育園では、お昼にはみんなにお弁当が支給される。
「おべんとうばこのうた」をみんなで歌ってから、お弁当を食べる。
…話は横道にそれるが、以前、同世代の友人と話していたときに、その友人が「おべんとうばこのうた」を知らない、というので、たいそう驚いたことがある。
「おべんとうばこのうた」って、有名じゃないのか?
それはともかく。
うちの保育園では、お弁当を早く完食した園児から、外へ出て遊ぶことができる、というルールだった。
だからみんなは、競ってお弁当を早く食べていた。
私は、お弁当を食べるのが遅く、いつも、最後までむしゃむしゃと食べていた。
お弁当を食べ終わるころには、お昼休みが終わっていたのである。
ところが、である。
1度だけ、お弁当を、月組の園児中、「2位」の速さで、食べ終わったことがある。
保育園の先生も、えらくビックリしていた。
そのときのことを、いまでもはっきりと覚えている。
そのときのお弁当は、「グリーンピースご飯」だった。
このグリーンピースご飯が、とても美味しくて、夢中になって食べているうちに、あっという間に食べ終わってしまった。
いつも、ビリッけつの私が、である。
それで、先生もビックリしたのである。
あの時の、グリーンピースご飯は、ちょうどよい塩加減だった。
その時の塩加減まで、いまでも鮮明に記憶しているのだ!
だが、グリーンピースご飯がお弁当で出たのは、そのときだけだった。
後にも先にも、1回だけである。
翌日からまた、私はビリッけつに戻った。
それから長い年月がたった20代のころ、このときのことを思い出し、「あのときのグリーンピースご飯を、もう一度食べたい」と、強く思うようになった。
自分で冷凍のグリーンピースを買ってきて、グリーンピースご飯を作ってみたが、あの時の味を再現できない。
あの時の「ちょうどよい塩加減」が、再現できないのだ。
再現するのをあきらめたまま、今に至る。
さて、2週間ほど前。5日間ほどの出張があった。
出張先で、突然この「グリーンピースご飯」のことを思い出した。
その2日後の夜。
出張先の人たちと、こじゃれた料理屋さんで、ささやかな懇親会が開かれた。
私が新しく着任したので、その歓迎会の意味も込めてということらしい。
美味しい料理が出たあと、最後に食事、つまりご飯である。
そこで出たのが、なんと「グリーンピースご飯」だったのだ!
しかもその味は、私が保育園の時に食べた味に、限りなく近かった。
ほどよい塩加減!
やっと出会えたぞ!という喜び。
今から思えば、2日前に「グリーンピースご飯」について思い出したのは、「虫の知らせ」だったのか?
あの「グリーンピースご飯」の味を、いつか自分でも再現してみたい、と思う。
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