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会いたい人に、会いに行く

4月2日(水)

慣れない環境のためか、2日目にしてすでに疲労困憊である。

先日出したばかりの本がある新聞記者の目にとまったらしく、

「本を読んで興味を持ったので、ぜひ、インタビューをしたい。1時間程度でいいので、時間がとれませんか」

と連絡が来た。

よくあんな地味なテーマの本に目をつけたものだ。

そして今日の午後、その記者の方が職場にやってきた。

私と同世代くらいの、飄々とした感じの男性記者で、

「この3月に、自分の希望でこの部署に異動したんですけど、実は文化面を担当するのは初めてなので、ヘンな質問ばかりするかも知れませんけれど、ご容赦ください」

という。

私としては、「門外漢」の記者が読んで興味を持ってくれただけでも嬉しい。

まだ全然片づいていない仕事部屋でお話をすることになったのだが、私が勝手にイメージしている記者とはやや異なり、ギラギラした感じがない、というか、肩の力の抜けた感じがする人なのである。

職業柄だと思うが、こちらの話を、面白いですねえ、と感心しながら聞いてくれる。

わからないことをこちらに率直に質問し、その質問に必死に答えると、「よくわかりました」と納得してくれる。

だから話していて、全然ストレスがたまらないのだ。

ひとしきり話が終わり、記者が「写真を撮らせてください」という。新聞記事に載せる写真を撮る、というのだ。

「このデジカメで、ですか?」と私。えらくちっちゃなデジカメである。

「そうです。私、プロではないので、スナップ写真ていどのものですけれど」

仕事部屋で何枚か撮った後、こんどは建物の外に出て撮ることになった。

何枚も撮った後、その撮った写真を、私に見せてくれた。

「ほら、これなんか、Mさんらしい感じが出ているでしょう」

「はあ」

初対面なのに、すでに「私らしい感じ」をとらえているというのが、可笑しかった。

1時間の予定が、すでに1時間45分を経過していた。

「すみません。こんなに長く」と記者。

「ひとつ、質問していいですか?」私は記者に質問した。「なぜ、私の本を選んだんです?」

記者が答えた。

「我が社に送られてきたりする本から、記者がそれぞれ本を選ぶんですが、私の場合、その選ぶ基準、というのが、本を読んでみて、『この人に会って話が聞きたい』というものなんです。お恥ずかしい話ですが、単に、会って話が聞きたい、という人のところに行くだけなんです」

「なるほど」

本を読んでみて、「この人に会って話を聞いてみたい」と思った記者が1人いた、というだけでも、嬉しいことである。

だが、売れると、もっと嬉しい。

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