密室の猫
5月1日(木)
妻の実家で飼っている老齢な猫が、堅い木でできた押し入れの引き戸を爪でこじ開ける、という話を、前回書いた。
引き戸の取っ手は、人間の腰の高さくらいの位置にあるので、猫が取っ手を持って開けることはできない。地道に爪でがりがりとひっかきながら、引き戸を少しずつ開けていくのである。
まるで映画「大脱走」みたいだな。…ちょっと違うか。
ちなみにトイレ(人間用)の扉も、同じ材質の木で作られた引き戸である。
今日、そこで事件が起こった。
ふだんめったに声をあげることのない猫が、ニャーニャーと鳴きわめいている。
鳴き声のする方に行くと、トイレ(人間用)の中にいるようである。
(またトイレに入りやがったな…)
ところが、である。
このトイレは、中から鍵がかかっていて、開けることができないのだ!
猫は、自分がここから出られないことに気づいて、助けを求めて鳴いていたのである。
トイレの鍵は簡単な作りになっていて、引き戸の取っ手付近にあるレバーを、上から下に下げるだけで、中から鍵がかかる仕組みになっているのだが、万が一、中で閉じ込められるようなことがあった場合に備えて、引き戸の外側についているねじを十円玉でまわせば、中の鍵に連動して開くような仕組みになっている。
…うーむ。説明が難しいな。わかるかな?
ところが運の悪いことに、引き戸の外側に付いているそのねじがバカになっていて、十円玉を使ってまわしても、いっこうに鍵が開かない。
猫は不安がって、ニャーニャー鳴いている。
10分ほど試行錯誤して、なんとか鍵を開けることができ、猫は救出された。
それにしても不思議である。
猫が自力で、トイレ(人間用)の引き戸を開けて入る。
…これまでの経緯から、ここまでは理解できる。
だが問題は、なぜ、鍵がかかってしまったのか?ということである。
猫が自分で、中から鍵をかけない限りは、鍵はかからないのだ。
だが、鍵をかけるためのレバーは、引き戸の取っ手のすぐ上の部分にあり、たとえ猫が背伸びをしたとしても、届く高さではない。
もちろん、引き戸の外側から鍵をかけることもできない。なぜなら、外側に付いているねじはバカになっていて、鍵をかけることも開けることもできなかったから。だから人間の仕業ではないのだ。
そもそも、猫が自分で、トイレの鍵を中からかける、なんてことがあり得るだろうか?
この密室トリックが、どうしても解けない。
ただ一つの収穫は、この一件以後、どうやら猫は、トイレ(人間用)に入るのが恐くなったようである。
悪ふざけが過ぎた、と思ったのだろう。
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