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シメサバが悪いのか?

5月23日(金)

なんといっても、健康第一である。

健康であればふつうにできることができない、というのは、とてもつらい。

たとえば、電車に乗り遅れそうになって走るとか、横断歩道を渡っているときに青信号が点滅し始めたので走るとか、健康であればふつうにできることが、足が痛いばっかりに、できないのである。

健康のありがたみを実感する瞬間である。

足が痛いと、心まで病んでしまう。

しかも、今回ばかりは、足が痛くなる原因が思いあたらないのである。

お酒だって、全然飲んでいないのだ。

このままではいけないと思い、夕方、かかりつけの病院に行った。

「痛みは引きましたか?」と先生。

「前回薬をいただいたあとは、痛みが引いたんですが、最近また痛みがぶり返したんです」

「どうしてです?」

「それが、原因がわからないんです。薬はちゃんと飲んでますし、お酒だって全然飲んでいません」

「おかしいですねえ」

「足がこんなにむくんでいるんですよ。ほら」

私は左足の靴下を脱いで、くるぶしの反対側を見せた。

ビックリするほど、足がむくんでいるのだ。

いままでに経験したことのないほどのむくみである。

「いままで痛風の発作は何度も経験していますが、ここまで足がむくんだことはありません」

「うーん」

医者の先生は、私のむくんだ足など見ずに、パソコンの画面ばかりを見つめて、なにやら適切な薬を探しているようだった。

「本当に原因が思いあたりませんか?」

「ええ」

「うーん。ひょっとしたら、重篤な病気かもしれませんね」

「え?」

「ご家族に、似たようなご病気の方はいらっしゃいますか?」

「いません、けど…」

「とりあえず、今日は血液検査をしましょう。そして前回と同じ薬を出しましょう。薬の効果を見たいので、1週間後、また来てください」

「はあ(また血液検査か…)」

ああ、俺は重篤な病気なのか???

これだけ健康に気をつけているのに、なぜ足が痛くなるのか?

これだけ手を尽くしても、なお足が痛くなるというのは、どういうわけか?

もう、一生治らないんじゃないか、という気がしてきた。

(もうダメかもわからんね…)

いっそ、家の近くの川に身を投げようか、とも思った。

そこで、ふと思い出す。

先週の木曜日、宅配サービスの食品が我が家に届けられた。

その中に、大きくて立派なシメサバが入っていた。妻がチョイスしたものらしい。

いままで見たことのないような、立派なシメサバである。

ふつうの居酒屋なら、ゆうに5,6人前くらいある量である。

あまりに美味しいので、ペロリと全部平らげてしまった。

足が痛くなったのは、そのあとからである。

(ひょっとして、シメサバが原因なのか?)

医者の先生からもらった「痛風のしおり」を調べても、シメサバのことは載っていない。

インターネットで調べてみるが、「シメサバは痛風に悪いかも」みたいなことは書かれているが、その根拠は書かれていない。

でもまさか、シメサバが原因ではないだろう。

もしシメサバが原因だとしたら、私はこれから死ぬまで、シメサバをたらふく食べることができなくなるではないか!

だから断じて、原因はシメサバではないのだ。

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