ああ!宅配ボックス
5月8日(木)
宅配便、というのは、受け取る方からすれば、かなりやっかいである。
前の勤務地で住んでいたアパートは、私が不在のときは、「不在連絡票」が郵便受けに入っていた。
夜遅くに家に戻り、不在連絡票を手にしたときには、すでに、再配達の電話ができない時間である。
仕方がないので、翌朝、電話をすることになるのだが、それでも日中は家に居ないので、職場に転送してもらうことになる。
すると、「管轄が違うので、もう1日待ってください」とかなんとか言われ、結局、受け取りに2日くらいかかったりする。
とにかく、宅配便の不在連絡票が郵便受けに入っていると、その日は憂鬱でたまらないのである。
4月から住んでいるマンションには、マンションの玄関を入ったところに「宅配ボックス」というのがある。
不在の場合は、配達業者が「宅配ボックス」に入れておいてくれ、さらに該当する部屋番号を入力してくれるのである。
これにより、「再配達」という面倒な手間が解消されるわけである。
(これはいい)
昨日、このマンションに入居して初めて、宅配便の不在連絡票が入っていた。
不在連絡票には、「宅配ボックスに入れました」と、手書きで書いてあった。
さっそく宅配ボックスのところまで取りに行くと、コインロッカーのようなボックスが10個ほど並んでいて、01番のボックスところに、私の部屋の番号が表示されている。
「部屋番号を押して、そのあとに確認ボタンを押してください」
と表示されていたので、部屋番号を押して、「確認」のボタンを押した。
これで開くかと思いきや、次に別の表示が出た。
「暗証番号を押して、そのあとに確認ボタンを押してください」
…暗証番号?
暗証番号なんて、聞いてないぞ!
適当な番号を押してみたが、「エラーです」という表示が出るばかりである。
暗証番号って、何だ?
まったく思いあたる番号がないのだ。
夜遅かったので、誰に聞くこともできない。
そして今朝、不動産屋さんに電話をした。
「あのう…宅配ボックスの暗証番号がわからないんですけど」
「少々お待ちください」
電話の向こうで、なにやらガサガサと調べていたいたようだったが、
「お待たせいたしました。こちらでは、把握しておりません」
「は?」
「通常ですと、配達業者さんがそのつど暗証番号を設定して、それを不在連絡票に書くはずなんですけど、不在連絡票にそれらしい番号はありませんか?」
穴の開くほど見たが、どこにもそんな番号は書かれていない。
「あのう、書かれてませんけど…」
「では、配達業者さんが書き忘れたのかもしれませんね。こちらではわかりませんので、確認していただけませんか?」
「わかりました」
配達業者に電話をかけてみるが、「ただいま電話がたいへん混み合っております」という自動音声が続くばかりである。
辛抱強くかけてみると、しばらくして、ようやくつながった。
「あのう…かくかくしかじかで、宅配ボックスの暗証番号がわからないんですけど、そちらで、暗証番号を設定されたと思うんですが、不在連絡票にも書いてなくて…」
「少々お待ちください。担当の者と確認して、こちらからかけ直します」
しばらくして、電話が来た。
「ただいま担当の者に確認いたしましたが、暗証番号は入力していない、ということでした」
「どういうことでしょう?」
「つまり、こちらで暗証番号を設定したわけではない、ということです」
「そうですか」
さあ、わかんなくなっちゃった。不動産屋は、配達業者が暗証番号を入力したのだといい、配達業者は、そんな覚えはない、という。
職場に着いてから、もう一度、不動産屋に電話をかけた。
「あのう…先ほど配達業者に聞いてみたんですけど、暗証番号は入力していないっていうんです」
「おかしいですねえ。そんなはずはないんですが…。もう一度確認してみますので、少々お待ちください。確認しだい、こちらからかけ直します」
しばらくして、不動産屋から電話が来た。
「すみません。確認したところ、入居の際に、部屋の中にファイルが置いてありませんでした?いろんな説明書を綴じたファイルです」
そういえば、エアコンの取扱説明書とかを閉じたファイルが、入居の際にあらかじめ部屋に置いてあったことを思い出した。
「はあ、たしかあったような」
「そのファイルの中に、暗証番号を書いた紙がはさんであるはずです」
「そうですか。帰ったら確認してみます」
帰宅したら、郵便受けにもう一枚、不在連絡票が入っていた。
「ご不在だったので宅配ボックスに入れておきました」と書いてある。
おいおい、昨日と今日で立て続けかよ!
部屋の隅々まで「ファイル」を探すが、これがいくら探しても見つからない。
(どこ行ったんだろう?たしかにあったはずなんだが)
当然あるはずだと思っていたファイルが、見つからないのだ。
私はすっかりパニックになってしまった。
このままずっと暗証番号がわからいままだったとしたら、10個ほどある宅配ボックスはやがて、私宛ての荷物で、あふれてしまうだろう。
そうなったら死ぬしかないな。
慌てて不動産屋さんに電話した。
「ファイルが見つからないんです。なんとか暗証番号がわかる方法がありませんか?」
もうほとんど泣きそうである。
「そう言われましても、こちらでは宅配ボックスの暗証番号だけは、把握しておりませんでして…」
万事休すか?
「大家さんならご存じだと思いますので、聞いたら折り返し電話いたします」
最後の頼みの綱は大家さんか!また電話を待った。
しばらくして電話が来た。
「大家さんの仕事場に電話をかけたんですが、お帰りになったようです」
「大家さんのご自宅の連絡先はわからないんですか?」
「わかりません。明日また、大家さんが仕事場に来られたときに聞いてみます」
この分では、いつになったら暗証番号がわかるんだろう?
もう一生、暗証番号がわからないままかもしれないな。
すっかり絶望的になった。
夜9時過ぎ。妻が仕事から帰ってきたので、玄関先で聞いてみた。
「入居のときにこの部屋に置いてあったファイル、あったでしょう?」
「あったね」
「あれ、どこにあるか知ってる?」
「ここだよ」
と、なんと妻は、下駄箱の中からそのファイルを取り出したのである!
えええええぇぇぇぇぇぇっ!!!下駄箱にぃ?
まさか、ファイルが下駄箱の中にあるとは思わない。
おかげでこちらは、大汗をかきながら部屋中を探し回ったのだ!
ファイルの1ページ目には、宅配ボックスの暗証番号が大きく書かれていて、夜9時すぎ、ようやく、2つの荷物を宅配ボックスから取り出すことができたのであった。
かくして、私一人が大騒ぎしてほうぼうに迷惑をかけた「宅配ボックス事件」は、幕を閉じたのであった。
明日は、不動産屋さんに電話をかけて、謝ろう。
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