古本屋ノスタルジー
不思議なものである。
このブログで、神保町の古本屋街の思い出話を書いた翌日、たまたまTBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」を聴いていたら、森岡督行さん、という人がゲストに出ていた。
久米宏のこのラジオ番組は、「全然有名じゃない人をゲストに呼ぶ」というのが主義みたいで、当然私は、この森岡さんという人を知らない。
だが話を聴いてみると、この人が、山形県寒河江市出身で、大学時代に東京に出て、卒業後はしばらく就職はせずに、神保町の古本屋街を散歩するという生活を送っていて、やがて神保町の一誠堂書店という老舗の古書店に就職し、さらに独立していまは茅場町で「森岡書店」を経営している、という人だということがわかった。
年齢は、私より5歳ほど下なので、同世代といってよいだろう。
大学卒業後に、神保町をうろつく毎日だった、という点が、私自身と重なっているようで、面白かった。だが私と決定的に違うのは、その後、それが高じて、古本屋に就職した、というところである。
神保町の一誠堂書店は、学生時代によく通っていたから、ひょっとしたら店内にいる森岡さんを見かけていたのかもしれない。
番組の中で久米宏が「森岡さんの書いた『荒野の古本屋』という本がとても面白い」と絶賛していたので、読んでみることにした。
彼が神保町の古本屋街のおもしろさに目覚めてから、一誠堂書店での修行を経て、独立するまでを、さまざまなエピソードを中心に、エッセイ風に書いている。
エッセイ全体を貫いているのは、自分に影響を与えた「人」へのまなざしである。だからこの本の主役は、古本ではない。「人」である。
まさに「古本は人なり」である。
ただ、後半の、森岡書店開業以降のエピソードは、さながら反町茂雄の『一古書肆の思い出』を彷彿とさせる。
まさに「古本は一期一会」である。
そういえば、反町茂雄も、一誠堂書店で修業をしていたのだった。
彼にとって、神保町での「本」と「散歩」と「喫茶店」の日々は、彼の人生に決定的な影響を与えたのだ。
だから私も、確信をもって言える。
神保町の古書店街を歩くと、人生のヒントに出会うのだ、と。
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コメント
「永六輔その新世界」の次の番組なので、流れでこの番組も聞いちゃうんです。グーグルで「久米宏 ラジオなんですけど 2014年04月26日」を検索してみて下さい。46分くらいからです。
投稿: こぶぎなんですけど | 2014年5月12日 (月) 12時56分