What do you recommend?
5月13日(火)
民放の朝の情報番組の中で、ワンポイント英会話みたいなコーナーがあって、
「これって、むかしのウィッキーさんの焼き直しじゃん」
と思いながらも、つい見てしまうのだが。
今日のワンポイントレッスンは、
「What do you recommend?」
あなたのお薦めは何ですか?というものだった。
映画とか、本とか、音楽とか、自分が薦めたものが、ほかの人にハマったためしがない。
薦めたことを、いつも後悔したりする。とくに親しい人によかれと思って薦めたものがハマらなかったときの自己嫌悪ぶりといったら、半端ではない。
伊集院光が司会をしている「週末TSUTAYAに行ってこれ借りよう」というラジオ番組があって、この番組の仕組みがおもしろい。
毎週、ゲストを呼んで、自分が過去に見た映画の中で、お薦めの1本を紹介してもらう。
映画についてさほど詳しくない、という伊集院は、そのゲストのお薦めの映画をDVDで見て、2週間後、もう一度そのゲストを呼んで、映画の感想を言い合う、というものである。
これって、けっこう残酷な企画である。
ゲストが事前に、「この映画のどこがおもしろいのか」というポイントを解説する。
しかし、伊集院がこの映画を見て、まったくハマらなかった、という可能性もあり得るのだ。
その場合、薦めたゲストの方も落ち込むし、薦められた伊集院の方も、どうしていいかわからなくなってしまう。
そういう危険性をもっているのだ。
ふつうだったら、
「この映画、おもしろいですよ」
と言われたら、
「今度見てみますよ」
とかなんとか言って、見たいと思えば見るし、見たくないと思えば、うやむやにしてしまうものである。
だがこの番組は、薦められた映画を、絶対に見なければいけないのである。
2週間後には、その感想を言わなければならない。
これは、双方にとって、残酷な企画である。
ライムスター宇多丸がゲストのときは、なかなか緊張感があった。
伊集院光と宇多丸は、今やトークの達人であり、カリスマDJである。
それに加えて宇多丸は、他の追随を許さない博覧強記の映画通である。
必然的に、「宇多丸はどんな映画を薦めてくるのか」という点に関して、他のゲスト以上に関心がおよぶのである。
それに、同世代だということもあり、喋り手として、お互いがお互いを、かなり意識している。
伊集院は宇多丸の映画評を信頼しているが、それ以上に、宇多丸は伊集院の感受性を信頼しているのだ。
宇多丸にしてみたら、「自分のお薦めの映画が、ハマってくれなかったらどうしよう。感受性が違うということなのか?」と、プレッシャーを感じるはずである。
一方で伊集院も、「ハマらなかったとしたら、俺の映画の見方が悪かったのか?」と、不安なはずである。
宇多丸が薦めた映画は、「ハッスル&フロウ」というアメリカ映画だった。
2週間後の番組で、2人は再会し、伊集院が、映画の感想を宇多丸に話す。
「…ということは、この映画にある程度はハマった、ということですか?」
最後におそるおそる宇多丸が聴くと、
「ある程度どころじゃないです」
と伊集院が答え、番組はこれで一件落着となった。
この番組を聴くたびに思う。
よかれと思ってほかの人に薦めた映画や本、音楽の感想は、聞かない方が精神衛生上はよいのではないか、と。
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コメント
そんなこともないですよ。
三年以上前の話ですが、「最近読んでいて面白かった本はありますか?」と先生にお尋ねした際、ある一冊の本を薦めていただきました。大変申し訳ないことに丸三年近く忘却の彼方だったんですが、つい最近偶然発見しまして、ためしに読んでみることにしました。読後、「薦めてもらってたのに、なんで今まで読んでなかったんだろう!」と後悔することしきりでした。おかげさまで存分にハマることができました。ありがとうございます。
今振り返ってみると、私は先生から随分本を紹介してもらってるんですが、ハマれなかった本というのはなかったと思います(お勧めいただいた一部の映像作品にはハマれなかったものもありましたが・笑)。
それから、直接薦められた本ではありませんが、時々先生がブログで取り上げられている福永武彦の小説を、最近になって読み始めています。ちなみに今読んでいるのは『死の島』です。暗いです、読み進めるのが辛いです(苦笑)。でも、このタイミングで読むようになってよかった、と思いながら読んでいます。
誰かに何かを紹介する、推薦するという行為は、おそらく即効性のあるものでは必ずしもなくて、紹介された側、推薦された側の中で条件が整った時に、初めて意味を持つのかもしれませんね。これからも様々な本や音楽、映像作品をご紹介ください。
長文乱文失礼いたしました。新任地でのご活躍をお祈りしています。
投稿: 元教え子 | 2014年5月14日 (水) 01時27分