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押し入れに入る自由

妻の実家の猫は、15歳だから、かなりの老齢である。

最近、めっきり動きに切れがなくなった、ような気がする。

しかし、猫というのは、不自由なものである。

まず、家の外に出ることはできない。

かといって、家の中ならどこにいてもいい、というわけではない。

お風呂とかトイレとか、そういうところには、近づかせない。

調理中の厨房に来られるのも迷惑だ。

猫からしたら、

「じゃあ俺はどこにいたらいいんだよ!」

となり、ストレスがたまるのではないだろうか。

そのうち猫は、驚異的な技を身につけるようになる。

堅い木製の引き戸がピッチリと閉まっている押し入れをこじ開けて中に入り、しかもその戸を閉めて、しばらくその中に閉じこもるのだ。

まるでそこが唯一の安息の場所であるかのように。

そうか!

ドラえもんが、のび太の部屋の押し入れで寝るのは、そこが一人になれる、唯一の場所だからではないだろうか。

押し入れに入る自由こそが、猫に残された、最後の砦なのだ。

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