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型破りな師匠に憧れる弟子

連休なので、さして書くことも思い浮かばない。

最近、テレビドラマはほとんど見ないが、少し前にテレビ朝日で放映され、録画しておいた松本清張原作・ビートたけし主演の「黒い福音」を見た。

ビートたけしが、事件を執拗に追うたたき上げで型破りな刑事を演じているが、その刑事のもとで研鑽を積みながら、一緒に捜査にあたる後輩のエリート刑事を、瑛太が好演している。

たしか大河ドラマの「篤姫」をたまたま見ていたとき、瑛太、という俳優の存在を知って、上手な役者さんだな、と思った印象がある。

今回の「黒い福音」を見て、西川美和監督の映画「ディア・ドクター」を思い出した。

この映画でも瑛太は、笑福亭鶴瓶演じる型破りな医師のもとで研鑽を積む若い医師の役を演じている。

瑛太演じる若い医師は、型破りの医師に憧れていくが、型破りの医師は、「俺を見習うな」という。だが若い医師は、型破りな医師の人間性に惹かれていくのである。

「黒い福音」の場合も、まったく同じ構造である。

つまり瑛太は、「本来見習うべきではない、型破りな師匠に憧れる弟子」を演じさせると、右に出る者はいないのだ。

いってみれば、「型破りな師匠に憧れる弟子」キャラなのだ。

ビートたけしにしろ、笑福亭鶴瓶にしろ、クセのある役者を相手にすればするほど、瑛太の演技は光る。

つまりは、受けの芝居が上手い、ということなのだろう。

黒澤明の映画「赤ひげ」(山本周五郎原作)で、赤ひげ先生(三船敏郎)の型破りな診療に感化される弟子を、加山雄三が演じていたが、いまならさしずめ、瑛太である。

いや、「赤ひげ」だけではない。山本周五郎の「師弟もの」が映像化されるとしたら、師匠に感化される弟子を演じるのは、瑛太以外にはあり得ない。

たとえば、私が大好きな、「内蔵允留守」という短編小説。

若い侍の虎之助が、兵法の極意を極めた内蔵允に憧れて訪ねに行くが、内蔵允は留守で、その近所に住んでいた百姓の老人の考え方に感化されていく、という話。

一筋縄ではいかない剣豪に憧れる若い侍には、絶対に瑛太をキャスティングすべきである。

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