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キョスニム、母校に帰る・その1

6月10日(火)

夜7時の飛行機に乗り、深夜0時、韓国T市のホテルに到着した。

今回の旅の主な目的は、金曜日と土曜日に私の母校の大学で行われる、国際学術大会での研究発表である。

今回は、妻も同行した。

6月11日(水)

午前。

学生時代に日本で一緒に学んだことのあるイさんが、転勤でこの町に勤めていると聞いたので、訪ねてみることにした。

勤務先を訪ねると、イさんがいた。

「どうしたんです?」イさんはびっくりした様子だった。

「金曜日に、私の通っていた大学で国際学術大会があって、そこで発表するんです」

「そうでしたか。知りませんでした」

「一緒にお昼を食べに行きましょう」

挨拶だけして、日本から持ってきたおみやげを渡して帰るつもりだったが、お昼を食べに連れていってもらい、コーヒーまでごちそうになり、しばらくお話をした。

「今日は会えて嬉しかったです」とイさん。「金曜日、都合がつけば必ず聞きに行きます」

夕方6時。

こんどは語学学校でお世話になったナム先生、クォン先生と、大学の北門で待ち合わせをする。私が事前に、国際学術大会のために大学に行くと訪れることを連絡したら、例によって会うことになったのである。

昨年9月に会ってから、9カ月ぶりである。そのときに行った店と同じフグ料理の店に行き、フグ料理を堪能したあと、コーヒーショップでいろいろな話をする。話の内容は、おもに最近の語学学校の話である。

話を聞いてみると、私が勉強していた5年前とは、だいぶ様子が違ってきているらしい。

いちばんの違いは、「スマホ」である。授業中も、休憩時間も、中国人留学生たちはずーっとスマホをいじっていて、授業に集中していないのだという。

まったくコミュニケーションがとれず、先生たちはかなりストレスがたまっているようだった。

「キョスニムがいらした5年前は、教室がうるさかったでしょう」

「ええ」

「でもちゃんと授業に参加してくれていました。いまの学生は、スマホをいじってばかりいて、まったく授業に参加しようとしない」

「そうですか」

「うるさかったころが懐かしいです」

もうひとつ面白い話を聞いた。

語学学校にいる、中国人留学生の男の子と、ロシア人留学生の女の子が、つきあい始めたという。

それもかなり熱烈な恋愛である。

ところが、二人を結びつける唯一の手段である韓国語を、2人はまったく勉強しておらず、韓国語をまったく喋れないのだという。

もちろん二人は、お互いの使っている言語も、まったくわからない。

つまり、意思疎通の手段が、まったくない、というのである。

いったい、意思疎通の手段がないのにもかかわらず、どうやってデートの時間を過ごしているのか?

「それよりも不思議なのは、お互いに言葉が通じないのに、どうやって会う約束をしているか、ということです」とクォン先生。「私たち教師の間でも、どうしてあの二人がつきあっているのか、不思議で仕方がないんです」という。

「スマホの翻訳アプリを使って意思疎通をしているのではないか」

という結論に達した。

「ケンカをするときも、スマホの翻訳アプリを使うんでしょうかね」

その姿を想像し、爆笑した。

そんなこんなで、夜10時になって、解散した。

今回の旅は、留学中にお世話になった、多くの人たちと会うことになっている。

初日からどっと疲れたが、これはまだ、序の口である。

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