答えのない本選び
先週の旅の話について、もう少し書く。
先週の韓国への旅では、多くの人に会うのことになっていたので、日本からおみやげを買って持っていくことにした。
誰に何を差し上げるか、というのは、とてもむずかしい問題である。
私も妻も、そういうことが不得手なので、考えているうちに、何だかわかんなくなってしまう。
とくに難しいのは、「本」である。
私の場合、面白いからと言って特定の本を薦めたり、お薦めの本を差し上げたりすると、たいてい憂き目に遭うことになっているので、あとでタイヘン後悔するのだ。
今回、本のプレゼントをすることにしたのは、妻の友人のへジョンさんと、語学学校の先生のキム先生とチェ先生の3人である。
へジョンさんは、日本語を勉強しているので、日本の文庫本をプレゼントすると喜ばれる、と妻が言っていた。
問題は、どんな本にするか、である。
へジョンさんは、アラサーの今どきの女の子なので、
夏目漱石の『こころ』とか、
三島由紀夫の『金閣寺』とか、
そういったものは好まない。
今どきの女の子が好きそうなエッセイや小説を選ばなくてはいけない。
だが、私も妻も、今どきの女の子が好きそうな本、というのを、いっさい読んだことがないので、何がいいのか、サッパリわからない。
何より最大のポイントは、「自分も読んで面白くて、その人にも面白いと思ってくれそうな本」を選ばなくてはならないのである。
決して、あてずっぽうで選んではいけないのである。
妻と2人で長考の結果、
三浦しをんの『光』
中島京子の『小さいおうち』
朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』
の3冊をプレゼントすることにした。
このうち、三浦しをんの『光』はまったく読んだことがなく、というか、三浦しをんの小説じたい、まったく読んだことがない。
だが、いま人気の実力派の作家だし、若い女性には受けるんじゃないか、と思って、選んだ。
2冊目の『小さいおうち』は、私が読んで面白いと思ったのと、映画化もされているということで、選んだ。
3冊目の『桐島、部活やめるってよ』は、小説は読んだことがないが、映画が面白かったので、選んだ。
語学学校の先生であるキム先生とチェ先生は、日本語が読めないので、韓国語に翻訳された日本の小説をプレゼントすることにした。
韓国の「キョボ文庫」という大型書店に行って、選ぶことにした。
これもなかなか難しい。
今度は、アラフォーの女性へのプレゼントである。
いくら私が好きだといっても、横溝正史や松本清張の小説をプレゼントするわけにはいかない(横溝正史の小説も松本清張の小説も韓国語に翻訳されている)。
これまた長考の結果、
チェ先生には、東野圭吾の『手紙』、
キム先生には貴志祐介の『青の炎』
を、プレゼントすることにした。
東野圭吾の『手紙』は、直木賞の候補作にもなり、映画化もされた名作中の名作である。
貴志祐介の『青の炎』は、小説は読んだことがないのだが、蜷川幸雄監督により映画化された作品が、とてもすばらしかった。
自分も面白いと思い、相手も面白いと思ってくれそうなギリギリのライン、というのが、いまあげた小説群なのである。
気になるのは、本をもらった3人の反応である。
最後まで、そのことが気がかりだった。
「本、気に入ってくれるかなあ。やっぱり、趣味に合わないかなあ」
と、さすがの妻も弱気になった。
「大丈夫だろう」
と言ってはみたものの、やはり私も気になる。
本をプレゼントするときは、どんな場合でも、たいていこんな気持ちになるものなのだ。
そして、何が正解なのかなんて、わからないのだ。
「自分のために薦めてくれた」という気持ちをどれだけ汲んでくれるか、あるいは、汲むことができるか、というところにこそ、本をプレゼントする意味があるのだと、思う。
その本にハマるかハマらないかは、二の次なのである。
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