カタツムリのハンドクリーム
6月19日(木)
思いのほか仕事が順調に進み、予定より少し早く終わったので、飛行機の出発までの間、市内をぶらぶらと歩くことにした。
今回のチーム6名のうち、韓国をよく知る2人は別行動をとることになり、あとの4人で市内を散策することになった。
私以外の3人は、韓国に初めて来た人たちばかりだったので、私がツアーガイドとして、案内することになったのである。ただし、この3人は、この仕事を通じて初めてお会いした方々である。職種がそれぞれ異なることもあり、これまでまったく接点がない方々だった。
かくして、初対面のオッサン4人による市内散策がはじまった。
3人のうちの1人、Mさんが言った。
「妻に、『カタツムリのハンドクリーム』を買っていかなければならないんです」
「カタツムリのハンドクリーム?」初耳である。
「ええ、何でも以前、韓国を旅行した人からおみやげにもらって、それがとてもよかったそうで、韓国に行ったら買ってきてくれと」
おそらく、カタツムリのエキスか何かが入っているハンドクリーム、ということだろうか? 化粧品に関心のない私は、全然わからない。
漠然とした情報だけをたよりに、町の化粧品屋さんをしらみつぶしにあたってみることにした。
「カタツムリのハンドクリーム、ありますか?」
「カタツムリのハンドクリーム?そんなものありません」
どこへ行っても、同じ反応である。なかには、
「うちは、植物性の化粧品しか扱ってないよ」
と言われ、追い返される店もあった。
帰国してから妻に聞いてみると、たしかに数年前までは、カタツムリのクリームは日本人観光客を中心に大流行していたが、いまはすっかりなりをひそめたのだという。
だがこのときは、そんなことを知るよしもない。
「本当に、カタツムリのハンドクリームなんでしょうか?」
私はMさんを疑いだした。
「いや、…カタツムリは間違いないと思うんですが、妻が、何かのクリームをハンドクリームだと思い込んで間違って使っていたのかもしれません」
Mさんも、だんだん自信がなくなってきたようだった。
オッサン4人が、「カタツムリのハンドクリーム」を求めて、化粧品屋に入る姿は、どこか滑稽である。
はたして、本当に「カタツムリのハンドクリーム」なるものは存在するのか?
最後の望みは、百貨店である。
町でいちばん大きい百貨店に行き、探してみると、カタツムリの絵を描いた容器に入ったクリームを発見した!
「これ、カタツムリのハンドクリームですかっ??!!」私は店員さんに聞いた。
「いえ、ハンドクリームではありません。顔に塗るクリームです」
「…そうですか…」
「でも、顔だけでなく、手に塗っても大丈夫です」
そう言うと、店員は私の手に、カタツムリのクリームを塗った。
たしかに、すべすべした感じになる。
「このへんで手を打ちませんか」私はMさんに言った。
「そうですね。これなら、妻も納得すると思います」
これが正解かどうかはわからないが、これで一件落着である。
ほかの人たちも、百貨店でおみやげを買って、あとは市場を案内した。
大都市の中の、異空間のような市場である。
私はこの場所が好きで、この町に来ると、必ずここに立ち寄るのだ。
この町を案内するとしたら、この空間がいちばんお薦めである。
海に近い市場を見学したあと、名物の魚料理を堪能した。
満腹になったあと、リムジンバスで空港に向かう。
「おかげで楽しい時間でした」と3人。
「またいつかどこかで、一緒に仕事をしましょう」
空港で別れ、それぞれ違う便で、日本に帰った。
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