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話を聞く人

むかしから、おそらく小学生の頃から、人の話を聞く人間だった。

とにかく、人の話をじっと聞く。

で、あまり余計な茶々は入れない。というより、気の利いた茶々を入れるほどの才覚がないのである。

だからもっぱら、「ほう」とか、「そうですか」といった相づちを打つ。なんとも芸のないことだが。

だが、私が「おじいちゃん先生」にモテるのは、たぶんそういう理由からだろうと思う。そういう愚鈍な人間だから、「おじいちゃん先生」たちは気持ちよく話せるのだと思う。

まあそんなこともあり、これまでいろいろな人の愚痴を聞いてきた。

それ自体は、とても好きなことである。その人の愚痴を聞き、そこに登場する人物の人間像を推理する。

「その人は、大言壮語を吐けば立派な人物だ、と勘違いしているんじゃないでしょうか」

とか、

「その人は、当初は自分の力量以上のことを意気揚々としていたのが、だんだん今になって自分の中で手に負えなくなってきたのではないでしょうか」

みたいな。

いわば「アームチェア・ディテクティヴ」的な楽しさがあるのだ。

しかし時に、それだけでは私自身の気が済まず、余計なことをつい言ってしまったりする。

以前、ある同僚から、ある仕事に関する愚痴のメールが来たのだが、その内容が、私が体験したことと全く同じことだったので、私の体験をふまえて、返事を書くことにした。

返事を書いたのが夜中だったこともあり、書いていくうちに、だんだんその当時のことを思い出してきて、ヒートアップしてそれはそれは長いメールになってしまった。

しかも、

「これを、『つける薬がない』と言わずして何というのでしょう」

とか、

「ああいう手合いが自然科学の研究者として大手を振っているから、日本の理系の研究はダメなんです」

とか、まあ言わなくてもいい「思い出し悪口」まで書いてしまった。

興奮状態のまま送信してしまったが、それからというもの、その同僚からのメールがパッタリとなくなってしまった。

おそらく、その同僚にしてみたら、ちょっと愚痴を聞いてほしかったていどのことだったのだろう。それを私が、一緒になって、というか、それ以上に上乗せして、愚痴の対象を口汚く罵り、完膚無きまでに打ちのめしたので、「ドン引き」してしまったのである。

(なにもそこまで言わなくても…。こいつとはあまり関わらない方がいい)

と思ったに違いない。

そんな失敗はこれまでに何度もあって、よかれと思って情念を込めたメールを書けば書くほど、相手はドン引きするのである。

そのたびに、反省するのだ。

私は「話を聞く人」なのだ。それ以上でも以下でもないのだ、と。

相手が期待しているのは、「話を聞く人」としての私なのである。

それ以上でも以下でもないのだ。

そのことを、肝に銘じなければならない。

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