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3年ぶりの再会

7月9日(水)

私はむかしから、人間の心の機微、というのがよくわからなくて、それがために、しだいに友人と疎遠になってしまう、ということが、よくあった。

ちょっとしたやりとりから、相手の自分に対する優先順位がすっかり下がってしまったよなあと感じたり、それとは逆に、自分がつい不義理をしてしまった結果、疎遠になってしまったり。前者は、自分ではいかんともしがたいが、後者は、私のせいである。

今日の夕方、神保町で、3年ぶりに友人に会った。友人、というのは、おこがましいかも知れない。韓国語で言う「ヒョン(兄貴)」だろうか。仮にここではヒョンと呼ぼう。

三省堂の地下にある放心亭で、ビールを飲みながら、話した。

「本当の友人とは、何十年ぶりに会ったとしても、昨日の続きのような会話ができる間柄のことだ」という言葉が私は好きだが、3年間のブランクを感じさせない、まさにそんな感じだった。

お互い、この3年間にあった出来事を話した。ヒョンは前の職場を辞めてから今までの話。私は、ヒョンが辞めてから3年間の職場の出来事と、4月以降に職場が変わってからの話。

前の職場にいたときに時折見せていた、曇った表情はなく、終始、ヒョンは晴れやかな表情だった。

…ヒョン、と呼ぶのは、かなり照れくさいなあ。まあいい。

話題の中心にあったのは、やはり「前の職場」の話である。

「もう前の職場に対する関心なんて、なくなったでしょう」とよく言われるが、そう思われているとすれば悲しい。ヒョンも私も、前の職場のホームページやフェイスブックを、こまめにチェックしているのだ。

「せっかく作ったものをまた壊して作りなおして、どうしてそういうことにエネルギーを使うんだろうねえ」

「そうですよねえ」

と、2人で深刻になったり、

「あんなにあからさまに利用したら、宮崎さんも怒るんじゃないでしょうか。ちょっとえげつないですよねえ」

「いっそ、宮崎さん本人を呼んできて喋ってもらった方が、たくさん人が集まるんじゃないの?」

「そうですよねえ」

と2人で大笑いしたり。

なぜ、二人はウマが合うのか?

以前誰かに、聞かれたことがある。

久しぶりに話していて気がついた。

二人とも、思春期をこじらせたまま、大人になったのだ。

でもたぶんそれは、「ほかの人にはわからない」だろう。

「これ、あなたの母校の高校の近くのお店で買ったコーヒー豆」

コーヒー豆のプレゼントである。ヒョンはいま、偶然にも私の出身高校のすぐ近所に住んでいた。あのあたりをよく散歩するらしい。

「日本酒にしようか迷ったんだけどね。いちばん美味しいと思ったコーヒー豆だよ」

「ありがとうございます」

私が今いちばんほしかったのは、コーヒー豆だったのだ。美味しいコーヒー豆ほど、もらってうれしいものはない。

あっという間の3時間半だった。

「久しく、母校のある町に行ってないですねえ」と私。

「じゃあ今度は、母校のある町で会いましょう。散歩でもしながら」

握手をして別れ、それぞれ反対方向の地下鉄に乗り込んだ。

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コメント

ひょんなことからまた同じ方面に住むことになり、時々飲めるようになるとは愉快ですな。
「前の職場」では同じことを「おかしい」と思える貴重な同志でした。それにしても少数派でしたなあ(笑)。古い書類まで再活用してもらえてありがたい限りです。
互いの持ち場でまた苦労していきましょう。次はひとつ、泡盛でもどうですか。

投稿: ぬらりひょん | 2014年7月10日 (木) 22時20分

たしかに「少数派」でした(笑)。ま、そういう性分なのでしょうな。

泡盛ですか。それじゃあ今度は、沖縄料理といきましょう。

投稿: onigawaragonzou | 2014年7月11日 (金) 00時41分

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