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運命の序曲

8月16日(土)

今年の夏休みは、雨にたたられた。

1年ぶりの「星空の映画祭」。8月16日(土)の上映作品は「アナと雪の女王」である。

まだ見ていない私は、ぜひ見に行きたかったのだが、朝から雨が降ったりやんだりである。しかもその雨も、ゲリラ豪雨のような激しい雨である。

しかし夕方から雨が上がった。

映画は夜の8時からである。

(夜まで天気はもつだろうか?)

ここ数日の天気の様子だと、いまは雨がやんでいても、いきなり大雨が降ってくる、という可能性が高い。

もし映画を見ている最中に雨でも降られたら、完全なぬれねずみになり、目も当てられなくなる。

そこまでして見に行くべきだろうか?

しかし、たとえ一人でも見に行くぞ!と息巻いていると、

「1200円払ってずぶ濡れになって映画を見るのか、数百円払ってDVDを借りてきて快適な家の中で見るのか、の選択ですな」と妻。相変わらず、容赦なく人を追い込むのが上手い。

その言葉にダメ押しされて、

(やっぱりやめよう)

と、映画を見に行くのをやめにした。

そうなると次に願うのは、「雨が降ってほしい」ということだけである。

どうか自分の決断が誤りでなかったと、安心させてほしい。

すると、夜9時過ぎ、おそらく映画のクライマックスの時間あたりで、大雨が降ってきた。

(やはり行かなくてよかったのだ)

と安堵した。

しかし、このままでは何かおさまりが悪い。何か別の映画が見たい。

そこで、たまたま手元にあった映画「戦争と人間 第1部 運命の序曲」(1970年公開)のDVDを見ることにした。

映画「戦争と人間」は、全部で3部構成だが、第1部だけでも、ゆうに3時間20分はある。全部見ようとすると、9時間23分かかる。

昭和初期の日本とアジアを描いた映画だが、今の時代状況と、とてもよく似ていることが、この映画を見ると、よくわかる。たとえば、「格差社会」が、人々の意識にどのような影響を及ぼすか、など。

この映画を見て、誰の、どの発言に共感するかを、試してみたい気がする。とくに指導者といわれている人たちに対しては。

監督の山本薩夫は、左翼系の監督なので、この映画もしばしば「左翼系映画」と、保守派からは揶揄されることが多い。とくにいまの時代の雰囲気からすれば、とうてい受け入れられる映画ではないのだろう。

しかしそれは偏見である。右とか左とかに関係なく、セリフには、胸を打つものが多い

たとえば、「アカ」として逮捕された青年が、まだ中学生の弟に言うセリフは、とりわけ印象的である。

「信じるなよ。男でも、女でも、思想でも。本当によく分かるまで。

分かりが遅いということは、恥じゃない。後悔しないための、ただひとつの方法だ。

威勢のいいヤツがいたら、そいつが何をするか、よーく見るんだ。

お前の上に立つヤツがいたら、そいつがどんなメシの食い方をするか、ほかの人にはどんなモノの言い方をするか、言葉やすることに裏表がありはしないか、よーく見分けるんだ。

人が何と言おうが、自分が納得できないうちは、絶対にするな」

これは別に、左翼の思想ではない。人間として誇り高く生きるための知恵である。

「思考停止するな」というメッセージである点において、どんな人間でも、心すべきことである。

なぜ、あの時代、戦争に突っ走ったのか?

それは、「想像力の欠如」と、「思考停止」による、と私は思う。

私が最も恐れるところは、そこである。

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